コロナ対策・5G進展でサイバーセキュリティは国、自治体の喫緊の課題に――ジャパンセキュリティサミット2020 開幕  「Opening Dayシンポジウム(1)」

「ジャパンセキュリティサミット2020」が開幕した。これは、日本を代表する公的団体・学術研究機関・産業界の識者ネットワークの ”知“ を集結し、様々な角度からセキュリティについての議論を深めるイベントである。初日の9月1日は 「Opening Dayシンポジウム」として、各省庁・自治体、産業界、学術機関、識者・ジャーナリストの立場から、現在のサイバーセキュリティに関する脅威と対策、取り組みについて、情報が発信された。

Opening Dayシンポジウム当日の模様を、2回に分けてレポートする

開会挨拶

ジャパンセキュリティサミット実行委員会 実行委員長 辻井 重男 氏

新型コロナウイルス感染症拡大により、「ジャパンセキュリティサミット2020は前回の同2019のようなリアルイベントではなく、動画などのコンテンツをふんだに盛り込んだオンラインイベントでの開催をする」と、開会宣言を行った。

開会の挨拶に続き、辻井氏は本人確認の重要性がさらに増すという話題から切り出した。コロナ対策の特別給付金で本人確認が難しく苦労をしたことを例に挙げ、現在わが国は本人確認に穴があることが分かった。今後は、テレワークの定着や電子印鑑・電子署名の普及などで本人確認重要性がさらに増す。辻井氏は、3層構造の公開鍵を用いて高い精度で本人確認ができる公開鍵暗号の提案を行い、本人確認の重要性に対応できるような取り組みを進めていることを説明した。

そして、コロナ禍において、自由(経済活動の活性化)、安全(感染防止)、プライバシーの3つを同時に実現させることは難しいが、実現させなければならないと指摘した。これをどうするかを考えていくべきだと述べた。

さらに、ジャパンセキュリティサミット2020の後半、9月23日(水)24日(木)10月6日(火)7日(水)に開催される「光輝会 Days」についての紹介を行った。ジャパンセキュリティサミット2019でも光輝会は開催され好評であったが、今年はオンラインで多くの有識者が登壇される。是非こちらにも参加してほしいと紹介し、開会の挨拶を締めくくった。
光輝会についてはJapan Security Summit Updateのページで確認をして欲しい。

来賓挨拶①

総務省 サイバーセキュリティ統括官 田原 康生 氏

田原氏は、2020年7月に発表された「IoT・5Gセキュリティ総合対策2020」についての解説を行った。

IoTに対する攻撃が増えているが、総務省では2017年より、サイバーセキュリティタスクフォースを設置している。タスクフォースでは、IoT/AI時代のサイバーセキュリティを支える基盤・制度、IoT/AI時代のサーバーセキュリティを担う人材育成、IoT/AI時代のサイバーセキュリティ確保に向けた国際連携などについての研究をしている。月に1回程度の会合を開催して「IoT・5Gセキュリティ総合対策2020」につなげたと語る。

IoT・5Gセキュリティ総合対策2020には、コロナ禍における状況も加味している。ポイントは、COVID-19への対応を受けたセキュリティ対策の推進、5Gの本格開始に伴うセキュリティ対策の強化、サイバー攻撃に対する電気通信事業者のアクティブな対策の実現、我が国のサイバーセキュリティ情報の収集・分析能力の向上に向けた産学官連携の加速である。
IoT・5Gセキュリティ総合対策2020の内容詳細については、こちらで確認をして欲しい。

来賓挨拶②

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC) 副センター長 内閣審議官 山内 智生 氏


山内氏は、わが国でもセキュリティに関心が高まっている実感があり、「Opening Dayシンポジウム」もユーザー系の人も多く視聴していると思うので、そういう方々に向けてNISCがどう考え、何をしているかを解説すると語った。

国が推進する「サイバーセキュリティ戦略」において、目的を達成するための戦略として「経済社会の活力の向上及び持続的発展」「国民が安全で安心して暮らせる社会の実現」「国際社会の平和・安定及び
我が国の安全保障への寄与」が挙げられるが、これらを横断的に支える基盤が大事である。

NISCのサイバーセキュリティ戦略本部では、「サイバーセキュリティ2020(2019年度年次報告・2020年度年次計画)」を2020年7月に発表した。ここでは、コロナ禍においてサイバーセキュリティ対策として取り組むべき内容を公表している。山内氏は、サプライチェーン全体の対策強化、東京2020大会を踏まえたレガシー活用、DX With Cybersecurityの実現に向けた人材育成などにも言及した。

さらには政府がクラウドファーストに向かうにあたってのセキュリティ評価制度についての取組、セキュリティ情報を集約した「みんなで使おう サイバーセキュリティ・ポータルサイト」についてもの紹介した。

来賓挨拶③

経済産業省 サイバーセキュリティ・情報化審議官 江口 純一 氏

江口氏は、急激にIT化が進んでいるだけでなく、コロナ禍の影響によって急激にIT化を進めざるを得ない状況になり、セキュリティ面の不安が増えている。セキュリティを担保しながら、IT化、Society5.0を実現しなければならないと指摘した。

次いで、経済産業省の取り組みについて紹介した。まず、サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーム(CPSF)を紹介した。これは、(1)企業間のつながり、(2)フィジカル空間とサイバー空間のつながり、(3)サイバー空間におけるつながり――のそれぞれについてのガイドラインを提供したものである。IoTセキュリティ・セーフティ・フレームワーク(IoT-SSF)の案を策定し、英語版も提供しているという。

次に、デジタル化の急拡大による新たなセキュリティ課題への対応についても述べた。IoTについては文面ではなく実際に動かして見なければわからないこともあり、それらについても実証してみることが大事であるとした。

さらに、昨年の「ジャパンセキュリティサミット2019」でも紹介した「サイバーセキュリティお助け隊実証事業」のその後音取り組みについての紹介を行った。こちらは、2020年6月にIPA(情報処理推進機構)から報告書が提供されていて、2020年度はさらにエリアを広げて事業を推進していく予定だ。

最後に、産業界を挙げたサプライチェーン全体へのサイバーセキュリティ強化運動への展開も紹介し、経済産業省ではサプライチェーン・サイバーセキュリティ・コンソーシアムを立ち上げて今後も活動に取り組んでいくとした。

来賓挨拶④

防衛省 サイバーセキュリティ・情報化審議官 深澤雅貴氏

政府や重要インフラをターゲットとした攻撃が増えている。その攻撃は国家が関与しているという指摘もある。防衛省、自衛隊へのサイバー攻撃も増えている。深澤氏は、防衛省が取り組むサイバー攻撃対処のための施策について紹介した。

防衛省ではサイバー攻撃対処6本柱を掲げている。(1)情報システムの安全性の確保、(2)専門部隊によるサイバー攻撃対処、(3)サイバー攻撃対処態勢の確保・整備、(4)最新技術の研究、(5)人材育成、(6)他機関などとの連携――である。

特に力を入れているのが、(3)で掲げたサイバー関連部隊の拡充である。24時間365日態勢で動くサイバー防衛隊は、現在290名で構成されている。2023年には陸上、海上、航空の各自衛隊を含めて1000人態勢への拡充を予定している。また最新技術の研究や、人材の確保育成についても重要なポイントと捉えているとして、人材教育では留学や官民連携なども行っていると説明した。

最後に国際協力の重要性も説く。米国との協力を中心に、英国、ドイツ、オーストラリア、エストニア、NATO(北大西洋条約機構)などとの連携も行っていると説明を行った。

来賓挨拶⑤

警察庁 警察庁長官官房サイバーセキュリティ・情報化審議官 河原 淳平 氏

河原氏は「サイバー犯罪の現状と対策」と題して講演した。

サイバー犯罪は近年増加傾向にあり、2019年には9519件と過去最高になだった。新型コロナウイルス感染症に関連するサイバー犯罪、サイバー攻撃も増えおり、すでに600件を把握している。マスクの販売や特定給付金に関連する詐欺なども含まれている。さらには、テレワーク普及により情報摂取なども増えている。実際の事例として、インターネットバンキングで不正送金を誘導するスミッシング(SNSによるフィッシングサイトへの誘導)について解説した。

警察庁では、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)や全国銀行協会などと連携して注意を喚起しているという。JC3は、新型コロナウイルス感染症に乗じた犯罪の手口などを紹介している。さらに、サイバー犯罪防止のための広報パンフレットやセキュリティ対策ビデオ、Twitterでの情報発信など、警察庁関連の広報資料については、警察庁のサイバーポリスエージェンシーより確認をして欲しいと語った。

来賓挨拶⑥

東京都 副知事 宮坂 学 氏

宮坂氏は、「スマート東京を支えるサイバーセキュリティのあり方について」という題で講演した。

都民の約8割がスマートフォンを保有しており、世界につながっている。さらに5Gの商用サービスによりそのつながりはさらに広がるであろう。宮坂氏は、今後は現実世界とサイバー世界が融合するが、セキュリティ対策は重要であると指摘し、東京都のDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みとサイバーセキュリティへの対応について紹介した。

東京都は、スマート東京の実現に向け、3つの柱を立て、施策を展開している。「電波の道」で「つながる東京」(TOKYO Data Highway)、公共施設や都民サービスのデジタルシフト(街のDX)、都庁のデジタルシフト(都庁のDX)である。

いままでつながっていないものがつながるので、これらの3本柱を実現するにはサイバーセキュリティを確保して根幹を支えることが重要課題となる。宮坂氏はそれぞれについての詳細について解説した。その中でも、セキュリティ人材の確保は喫緊の課題とし、都職員と専門アドバイザーでチームを構築して対応していくとした。

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ジャパンセキュリティサミット2020 「Opening Dayシンポジウム」はここで一度休憩として、後半の基調講演、特別講演が実施された。