Armから分社した新生ペリオン、セキュアなIoTデバイス一元管理プラットフォームを国内で継続して提供

英Armの事業部門としてIoTプラットフォームやデータ管理サービスを手掛けていたIoTサービスグループ(ISG)のうちPelion IoT Platform部門が、2020年11月にPelion(ペリオン)として独立した事業を開始した。これは、Arm時代に提供していた「ペリオンIoTプラットフォーム」の名称を引き継いだもの。国内でも、新生ペリオンがIoTコネクティッド・デバイスサービス(デバイス管理、コネクティビティ管理)を提供する独立会社として動き始めた。ペリオン 事業開発ディレクターの春田篤志氏に、ArmからのIoTプラットフォームサービス事業の独立の経緯や、今後の主軸となるサービス、国内での展開などを聞いた。

ペリオン株式会社 事業開発ディレクター 春田 篤志氏

IoTのコネクティビティからデバイス管理までを新生ペリオンが提供

ペリオンのArmからの分社化について、春田氏はこう説明する。「既存のサービスを継承したうえで、個別の戦略と市場への迅速な進出を追求、事業価値を最大するためArmの子会社としてPelion事業を分社化することになりました」。

 

▼ArmからIoTプラットフォーム事業を独立、分社化

Pelionはサンノゼに本社を置き、500社の顧客基盤を引き継ぐ。

ペリオンのミッションは、「セキュアにデバイスをつないで、セキュアにデータを収集して、有効活用すること。これはArm時代と変わっておらず、人とデバイスが共栄する世界を築くことを目指しています」と春田氏は語る。その上で、国内で2つの事業を展開する。1つがIoT向けのセルラーサービスを提供するコネクティビティ、もう1つがIoTデバイスをセキュアに一元管理するデバイス管理だ。すなわちこの2つの事業により、多様なIoTデバイスとデータを処理するクラウドの間をつなぎ、セキュアなIoTコネクテッドデバイスプラットフォームを提供することになる。

▼新生ペリオンの提供するセキュアなIoTデバイス管理プラットフォームの対象範囲

春田氏は、「プラットフォームはクラウドで提供していますが、AWSなどのクラウドベンダーと戦うのではなく、もっとIoTデバイスに寄り添ったデバイス管理ソリューションを提供します。ソフトウエアをクラウド側から配送してIoTデバイスをアップデートしたり、エッジコンピューティングのインフラにしたりすることができます」と説明する。IP通信に対応しないノンIPのIoTデバイスであっても、ゲートウエイを経由して、IoTシステムの末端までの一元管理が可能になる。

セキュアなIoTの実現を素早く容易に

ペリオンのIoTプラットフォームサービスは多様なユースケースをターゲットにしている。1つの代表がミッションクリティカルなIoT。信号機、産業機器、スマートメーターなど、第三者に乗っ取られたりした場合に大きな被害が想定されるケースで、能動的にIoTデバイスを管理、監視する必要がある。再生可能エネルギーの発電システムやバーチャルパワープラント(VPP)ゲートウェイや計量機器、またビルの設備機器をマルチベンダー管理するためのゲートウエイなどにも、適用が想定されている。一方で、IoTといっても、農業管理や温湿度環境センシングなど、シンプルにセンサーのデータをアップロードするためだけのデバイスを利用するケースでは、能動的な管理、監視の必要性が低く、ペリオンのソリューションまで求められないこともあるという。

▼ペリオンIoTプラットフォームのデバイス管理ダッシュボード

すでにペリオンのソリューションを導入済みの事例も少なくない。例えば台湾のスマートシティの事例では、スマートポールやサイネージのデバイス監視やセンサー情報の収集をする際に、ペリオンをデバイスとクラウドの間に噛ませることで、機器のセキュアな管理を実現している。スマートライティングの事例では、道路の街灯のIoTシステムの管理に用いられている。これは深夜には照度を落とし、車や歩行者が来たらその場所の照度を上げることで、省エネと安全を両立させるIoTシステムである。また国内でも複数の自治体で河川の水位監視のシステムの管理にペリオンを用いている例があるという。

IoTプラットフォームサービスとしてのペリオンの価値は、セキュリティを確保しながらIoTのエコシステムを容易に構築できることにある。「IoTデバイスのセキュリティを担保するためのソリューションは様々な実装方法があります。ペリオンでは、IoTデバイスに鍵を埋め込んでアクセス管理をするときにも、同じデバイスでも購入経路によって管理サービスを別にするような運用も可能です。また、ファームウエアのアップデートも、電子署名を検証することで、セキュアなリプログラミングを可能にするほか、マイコンなどのノンPCデバイスでも差分更新や失敗時のロールバックなどにも対応できます。また、GMOグローバルサイン、サイバートラストなどの第三者の認証機関とも連携して、綿密なデバイス管理ができることも特徴でしょう」(春田氏)。

デバイス管理の柔軟性を確保するという側面でも、ペリオンのソリューションにはメリットがある。春田氏は、「例えば特定のIoTプラットフォームを使うとなると、専用のエージェントが必要になり、ベンダーロックインされてしまう可能性があります。業務系ロジックのクラウド基盤を変更したくても、多くのIoTデバイスのエージェント、ならびに必要な認証鍵を入れ替えるのは現実的ではありません。一方で、ペリオンのソリューションを使っていれば、デバイス管理のプラットフォームはペリオンにロックインされるとしても、クラウド側の変更の自由度は格段に高まります。デバイス管理とビジネスロジックを分離できるのです」と語る。

▼ペリオンIoTプラットフォームのデバイス管理の詳細画面


国内でのビジネス展開でも、Armからの分社化によるメリットが生まれつつあるようだ。Arm時代にはデータ管理からSIM管理、デバイス管理と幅広くソリューションがラインアップされていていた。今回の分社化で、国内のペリオンでは「セキュアなデバイス管理とそのためのコネクティビティ」の部分にフォーカスしてビジネスを展開できるようになるという。「Armの内部にいたことのシナジーももちろんありましたが、新生ペリオンではセキュアなデバイス管理のプラットフォームにフォーカスすることで、パートナーに明確なアプローチができるようになると考えています。IoTデバイス・コネクティビティの一元管理プラットフォームとして、総合電機メーカー様、システムインテグレータ様といった社会インフラを支えるパートナー様とともに採用実績を積み上げていきたいと考えています」(春田氏)。

 

<訂正配信>

取材先からの要望があり、ペリオンに関係する企業の情報についての記載を修正して再掲載いたします。