東京都、中小企業のセキュリティ対策を支援
「基本対策事業」と「啓発事業」の2本立てで実施へ
東京都産業労働局は、サイバー攻撃リスクが高まる昨今の状況を受けて、都内の中小企業を対象とした2つの新たな支援施策を発表した。機器導入や規定整備を支援する「中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業」と、社内の意識啓発や実践訓練を行う「中小企業サイバーセキュリティ啓発事業」である。両事業とも2025年5月23日より募集を開始し、定員に達し次第受付を終了する。
それぞれの事業は、東京都が掲げる「2050東京戦略」内の産業施策「中小企業を支え、成長を支援」に基づくものであり、今後のサイバーセキュリティ施策の中核として注目される。
1.中小企業サイバーセキュリティ基本対策事業
― セキュリティ機器・規定整備を専門家が後押し
この事業は、ランサムウェアや標的型攻撃などに対する基礎的なセキュリティ対策の普及を目的に、機器・ソフトウェアの試用や社内規定の整備支援を提供するものである。
対象
- 東京都内に主たる事業所を持ち、セキュリティ対策への意欲を有する中小企業
支援内容(定員)
- UTM試用支援(50社)
統合脅威管理(UTM)機器を3か月程度貸与し、ネットワーク上のサイバー攻撃状況の把握と分析を支援。 - EDR試用支援(50社)
エンドポイント検知・対応(EDR)ソフトを試用し、実際の攻撃ログや挙動を通じて、企業環境へのリスク理解を促進。 - 社内規定整備支援(100社)
情報セキュリティポリシー等の整備を目的に、専門家を1社あたり4回派遣。実情に応じたセキュリティマネジメント体制構築を後押し。
セミナー・説明会(基本対策事業)
- 6月26日(木)13:30~15:30
会場:TKP新宿西口カンファレンスセンター
テーマ:「ホワイトハッカーが語る、巧妙化するサイバー攻撃の脅威と企業が行うべきセキュリティ対策」
※啓発事業との合同開催 - 7月8日(火)13:30~15:00
TKP東京駅カンファレンスセンター
「AI時代のサイバーセキュリティ対策とは」 - 7月24日(木)13:30~15:00
立川ふどうやビル
「中小企業のための効果的なセキュリティ対策とリスク管理」 - 8月6日(水)13:30~15:00
TKPガーデンシティ渋谷
「サイバー攻撃から中小企業を守るためのセキュリティ対策と復旧戦略」
※各回とも第2部に事業説明会を実施。会場とオンラインによるハイブリッド形式。定員は会場30名(6月26日は50名)、オンラインは約100名。
2.中小企業サイバーセキュリティ啓発事業
― 経営層・従業員を巻き込んだ社内全体での意識向上を図る
啓発事業は、テレワークやクラウド活用が広がる中で、社内全体にわたるサイバーセキュリティ対策の意識浸透を目指す。経営層、従業員、担当者を対象に、それぞれ異なるアプローチで支援を行う。
対象
- 東京都内に主たる事業所を有する中小企業(業種不問)
支援内容(定員)
- サイバー攻撃対応演習セミナー(100社)
経営層を対象とし、体験型セミナーで「サイバーリスク=経営課題」である認識を促す。演習形式により、初動対応や被害拡大防止の理解を深める。 - 標的型攻撃メール訓練(50社)
従業員を対象に、実際に近い形で標的型メール訓練を実施。フィッシング攻撃などへの対処スキルを高める。 - ネットワーク調査・構成図作成(50社)
情報システム担当者等を対象に、専門家を派遣して社内ネットワーク構成を可視化。脆弱性把握と改善に向けたアドバイスを提供。
セミナー・説明会(啓発事業)
- 6月18日(水)14:00~15:30(オンライン)
「経営者が押さえておきたい生成AIの実践法」 - 6月19日(木)14:00~15:30(オンライン)
「社内データが漏洩したらどうしますか?」 - 6月26日(木)13:30~15:30(ハイブリッド)
TKP新宿西口カンファレンスセンター(基本対策事業と合同開催)
「ホワイトハッカーが語る、巧妙化するサイバー攻撃の脅威と企業が行うべきセキュリティ対策」 - 7月14日(月)16:30~18:00(オンライン)
「投資と会社の成長を考えよう」
※定員はオンラインで約200名(6月26日の現地会場は50名程度)
共通事項
- 募集開始日:令和7年5月23日(金)
※定員に達し次第、受付終了 - 申込方法:両事業とも専用ホームページにて受付
- 参加費:すべて無料
- 主催:東京都産業労働局
まとめ
東京都は、基礎的なセキュリティ体制構築を促す「基本対策事業」と、企業全体での意識醸成を図る「啓発事業」の2つの柱で中小企業支援を本格化させる。セミナーや専門家派遣、機器試用といった多様な手段を通じて、都内中小企業のセキュリティレベル向上を後押しする今回の取り組みは、企業の規模や業種を問わず有益であるといえる。
両事業はそれぞれに役割が異なるが、組み合わせて活用することで、組織の体制・意識・実装の3点を同時に高めることが可能となる。サイバー攻撃の高度化・複雑化が進む中、こうした公的支援制度を活用する意義はますます大きくなっている。
詳細、申込等は下記のURLより確認いただきたい