情報漏洩対策に求められる意識改革
Gartnerが国内調査、AI活用時代のリスクと現場主導の取り組みを提言
ガートナージャパン株式会社(以下Gartner)は、同社主催の「ガートナー データ&アナリティクス サミット」において、国内企業を対象とした情報漏洩対策に関する最新の調査結果を発表した。
本調査は、2025年2月に国内のセキュリティ・リーダーを対象として実施されたものであり、AI/生成AI/AIエージェントの業務活用が広がる中で、情報漏洩に対する不安や対策意識の実態を明らかにするものである。
半数以上が情報漏洩への不安を抱える
調査結果によると、AI関連技術の導入が進む中で、過半数以上の企業が「これまで以上に情報漏洩が発生するのではないか」という不安を抱えていることがわかった。Gartnerはこの傾向を、社内における危機感の共有不足、及びユーザーの多様化・流動化が背景にあると分析している。

シニア ディレクター アナリストの矢野薫氏は、「不安はあっても、その共有は一部の層に限られているケースが多い」とし、特に出向者や退職者による情報漏洩が顕在化している現状に警鐘を鳴らしている。
従業員の「セキュリティ当事者意識」の希薄さ
調査ではさらに、ビジネス部門のユーザー、すなわち従業員のセキュリティ意識についても焦点が当てられた。60%以上の回答者が「情報漏洩対策の責任はセキュリティ部門にある」と回答し、自分自身がセキュリティの当事者であるという意識が希薄である実態が浮き彫りになった。

矢野氏は「オンライン教育などのE-Learningは一定の効果を持つが、それだけでは十分とはいえない」と指摘し、現場の日常業務の中で継続的に意識を醸成する工夫が必要であるとした。
「過剰共有」の防止へ、現場主導の対応がカギに
Gartnerは、AI/生成AI/AIエージェントの活用が進む中で、業務上のデータ活用と情報漏洩対策がより密接に関連してくると指摘する。重要情報の共有範囲の制限や機密性の判断は、システムだけに任せることはできず、実際にデータを取り扱うビジネス部門のユーザーがその都度判断することが求められる。
矢野氏は、「ビジネス現場で、活用と保護の意識を同時に育てることが求められている」とし、その一つの方策として「データ活用のアンバサダーがセキュリティ推進も兼務する」体制づくりを挙げている。
これは、データ利活用の推進者が、セキュリティ観点でも判断や教育を担うことで、業務の中に自然と保護意識を根付かせることを目的としたものである。
立場を越えた情報共有と現場主導の支援体制を
今回の調査結果からは、セキュリティ技術の導入や教育施策だけでは不十分であり、実際にデータを扱うビジネス部門のユーザー自身が情報漏洩リスクを判断し、適切に対応することが求められている現実が明らかになった。
Gartnerは、データ/アナリティクス・リーダーに対し、セキュリティ部門、ビジネス部門、経営陣との間でそれぞれの立場からみた危機感を共有できる場を率先して作るリーダーシップが求められていると提言している。また、データ活用推進のアンバサダーがセキュリティ推進も兼務するなど、業務の中で活用と保護の意識が同時に育まれるような取り組みが必要であるとしている。