サイバー人材需要5倍 柔軟性が鍵
総合人材サービスのランスタッド株式会社は、日本のIT&テクノロジー業界における最新のマーケット&サラリーレポート2025を公開した。本レポートは日本のIT求人市場全体を対象に、7つの職種群について供給・需要・報酬を多角的に分析したものである。
二重の課題——人口構造と急速なテクノロジー導入
2025年の日本は、堅調な経済基盤を有しつつも、少子高齢化とAI/クラウドの急速な導入という二重の課題に直面している。失業率は2.4%と予測される一方、人手不足は長期化の様相を呈し、現在のトレンドが続けば2040年に最大1,100万人の労働力不足に至る可能性が示される。これに対し、政府は「新しい三位一体」の労働市場改革に着手し、企業側では柔軟な勤務形態の拡充、定年延長、外国人材の受け入れが進む。実際、2024年10月の外国人労働者数は過去最高の230万人に達しており、構造的な不足を多面的に補おうとする動きが鮮明である。
需要の爆発——サイバーセキュリティ5倍、クラウド/セキュリティに重点
人口制約を補う手段としてのAIと自動化が浸透し、雇用代替ではなく生産性向上と新たな職域創出の補助線として位置づけられている。こうした環境下で、サイバーセキュリティ人材の求人件数は2025年半ばまでに基準値比500%超へ、データエンジニアリングも約300%に達する見通しが示され、需要拡大が突出する。あわせて、企業の人材配置はクラウド/コンテナ&仮想化(52%)とサイバーセキュリティ(51%)を最重視しており、安全なクラウド移行を支える基盤・運用領域に投資が傾斜している点が特徴である。
AIスキルギャップ——最適化・微調整に人材不足
AIの導入は広がるものの、社内に必要な専門知識を十分に保有していない企業が過半を占める。とりわけ、ビジネス要件に合わせたモデルのカスタマイズ/微調整に関する知見を持つ企業は25%にとどまり、的を絞った人材育成が喫緊であることが明らかになった。導入が“点”で止まらず“面”に広がるためには、このボトルネックの解消が前提条件となる。
働き方のギャップ——離職の第1要因は「柔軟性」
従業員の志向と企業戦略の齟齬が、日本固有の課題として浮き彫りになっている。候補者は勤務の柔軟性とリモートの選択肢を強く求め、90%が完全リモート職種を希望する一方、勤務地の柔軟性の欠如が離職理由の第1位(39%)であるという結果が示された。さらに、サイバーセキュリティやテック系営業では求人の58%がリモート関連であり、従来型オフィス中心の働き方からの移行が進行中である。希望と制度設計のミスマッチを埋めることが、人材確保・定着の鍵となる。
地域格差とハブ戦略——東京一極・地方の費用対効果
IT人材の報酬は地理的集中度と地域経済の地位を反映し、明確な序列が見られる。戦略的IT人材(例:アーキテクト、プロダクト/DXマネージャーの多く)が東京に集中し、東京の給与水準は全国平均より少なくとも20%高い。一方で、大阪・愛知・埼玉はミドルクラスのチーム拡大における費用対効果の高いハブとして機能しやすく、シニアとミドルの賃金格差が小さい地域では、高スキルのミドル層を確保しやすい。なお、最高報酬はIT戦略・企画・コンサルやDXマネージャーといった、事業を牽引する高レベル職種に集中する。
市場の声——中堅レンジで競争激化、候補者体験が決め手
同社アソシエイトディレクターのリチャードソン・アレクサンダー氏は、大規模組織でのプロジェクト経験、日英の言語力、コミュニケーション能力、および業界特化知識が高収入の鍵であると指摘する。採用市場では年収1,000万〜1,500万円の中堅層で競争が最も激しく、金銭報酬に加え柔軟な働き方(とくにリモート)が有力な非金銭的報酬として効く。加えて、迅速なスケジュール調整や詳細なフィードバックなど、候補者体験を重視した採用の積極性が、優秀人材の獲得・維持を左右する。
本調査は、求人サイト/プロフェッショナルネットワーク/LinkedIn/転職サイトなどの二次データに加え、LightcastやSalary Expert等の外部データを用いて、人材供給・需要・年俸・市場競争力(求人倍率)を評価・検証したものである。レポートはリリース記載のダウンロードページから入手できる。
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出典:PRTimes ランスタッド調査、需要が爆発的に増加する日本のIT人材の実態を公開。サイバーセキュリティ需要が5倍に急増、働き方ギャップや地域格差も拡大
