ちょっと待って!そのサテライトオフィスは本当に安全か?
コロナ禍において急速に浸透するテレワーク。この大きな社会的な環境変化の影響で、都心のオフィス契約の解約が進み、郊外への移住者も増加するなど、働く場所の多様性が進んできている。現在はテレワークが在宅勤務として語られることが多いが、これからはもっと都心郊外問わずコワーキングスペースで仕事をする機会も増えてくることが予測されるし、地方型テレワークと呼ぶべき自然の中でのワーケーションも現実のものとなってきている。
ところが、そこで働く人たちは、そこが仕事場であるという意識を持っているだろうか?場所が変わったとしてもどのような環境であったとしても、仕事内容が変わらないのであれば、当然のことながら日々通勤をしていたオフィスと同様な環境が整備されているべきと認識すべきであろう。特にネットワーク環境の整備とセキュリティが担保されていることが前提条件になると考えて欲しい。
一般社団法人セキュアIoTプラットフォーム協議会事務局長の白水公康氏は「テレワークのセキュリティに関しては、VPNやデバイス認証による端末管理、リモートデスクトップなど利用者側での対策が委ねられることが多く、働く“場”に関する議論がされることが少なかった」と語る。都心のコワーキングスペースでも、当たり前にフリーWiFiが使われている現状や厳密に管理すべきパスワードが目に付くところに張り出されている環境を目にすることも多い。地方においても景色のいい保養所や廃校が空いたからというだけで、テレワークに最適だといううたい文句も良く見聞きする。そこで施設の運営事業者である自治体や企業、団体に気づきを与え、何から手を付けたらよいのかの道標が必要となるはずである。そこで、日本のテレワークを推進するリーダーである一般社団法人日本テレワーク協会とIoTを中心にセキュリティの普及啓発をするセキュアIoTプラットフォーム協議会より、「共同利用型オフィス等で備えたいセキュリティ対策について 第2版」がリリースされた。
セキュリティを実装するためには、技術(システム)面で対応するだけで十分ではなく、人(運用)やルール(規定)を整備することも必要である。そこでセキュアIoTプラットフォーム協議会はサイバーセキュリティに関する技術の観点で、日本テレワーク協会は運用やルール作りに関わる視点で、それぞれの知見を持ち寄った。
この事業に取り組んだ日本テレワーク協会主席研究員の大沢彰氏は「共同利用型オフィスの運営事業者は、ぜひ自分たちの課題を認識し、具体的な対策を取るために活用して欲しい。投資を必要とする対策ばかりではなく、運用やルール作りで改善できる部分も多い」と語る。このドキュメントでは、これだけは最低限守るべきという「基本対策」とより安全な環境を整備するための「応用対策」に分かれて記載されている。現実をしっかり把握した上で、できるところから手を付けていくという使い方ができる。
コワーキングスペース、レンタルオフィス、シェアオフィスなど様々な形態の共同利用型オフィスが乱立し、また各地方がワーケーションの誘致合戦をしていく中で、これから選ばれるための差別化要因としてセキュリティが注目されてるであろう。テレワーク利用者の意識が高まるにつれ、逆にセキュリティが担保されていないオフィスや自治体は選択されないという時代がやってくることが想定される。
さらに本対策は総務省の令和3年度予算「情報通信利用促進支援事業費補助金(地域サテライトオフィス整備推進事業)」において、提案事業のセキュリティに関する要件となった。具体的には同事業実施要領に本対策に記載の基本対策を講じることされている。
これにより地域においても共同利用型オフィスのセキュリティ対策が整備され、安心安全なテレワーク環境の実現を加速することが期待される。
また一方では、利用側の立場に立ってみると、どこの共同利用型オフィスが安全なのかが分からないという課題もある。その点について、白水氏と大沢氏に確認してみると、「利用者が選択しやすくするために、セキュリティを実装し、安全に運用している共同利用型オフィスに対して、認証をするようなプログラムを検討している」との回答が返ってきた。当然のことながらそこで基準とされるのが、今回リリースされた「共同利用型オフィス等で備えたいセキュリティ対策について 第2版」である。
コロナが終息したとしても、この働き方の多様性は止まることがない大きな社会変革だと想像する。しかしニューノーマルにおける様々な便利なサービスの裏側には、危険が潜んでいる。新しい時代の明るい未来を安心して享受する為には、万全なセキュリティ環境が前提として整っていることを改めて認識すべきであろう。
【資料ダウンロード】共同利用型オフィス等で備えたいセキュリティ対策について 第2版
【報道発表資料】総務省「情報通信利用促進支援事業費補助金(地域サテライトオフィス整備推進事業)」