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「DX × セキュリティで変革を支える」──チェンジHDとサイリーグHDが描く、レジリエンス共創の最前線

2025年5月20日、株式会社チェンジホールディングスとそのグループ会社サイリーグホールディングス株式会社は、都内で事業戦略発表会を開催し、サイバーセキュリティ事業の今後の方向性と、急増する証券系不正アクセスへの見解を示した。

急速に進行するデジタル社会と、それに伴うサイバーリスクの高まり。その最前線に立つ両社は、組織の枠を越えた連携によって「すべての組織にサイバーレジリエンスを」というビジョンの実現を目指している。

DX推進に不可欠な“守り”の要、セキュリティへの本格参入

発表会の冒頭で登壇したのは、チェンジHD 代表取締役社長 福留大士氏。福留氏は、チェンジグループの成長戦略を紹介しつつ、「人口減少という不可避の社会課題に対して、DXは有効な打ち手であり、その推進には堅牢なセキュリティ基盤が必要不可欠だ」と語った。

株式会社チェンジホールディングス代表取締役兼執行役員社長兼
サイリーグホールディングス株式会社取締役 福留 大士 氏

同社は「Change People, Change Business, Change JAPAN.」を掲げ、DXを通じて個人と組織、ひいては日本全体を変革するというビジョンを掲げてきた。グループの2024年度売上高は550億円、営業利益は104億円に達し、規模と影響力を拡大している。

福留氏は、「DXは攻めの手段であると同時に、守りの意識を伴わなければならない。サイバーリスクはデジタル活用の裏返しとして不可避であり、これに対抗する力を社会全体で底上げしなければ、持続可能な成長は成しえない」と強調。その中心を担うのがサイリーグホールディングスだ。

「League=仲間」──連携が導くサイバーレジリエンス

「League=仲間」という名が象徴するように、サイリーグHDは志ある企業・人材とのパートナーシップを通じてエコシステムを構築。M&Aやアライアンスを積極的に進め、セキュリティを支える広範なネットワークを形成していく。

その一例が、セキュリティ監視や初動対応に強みを持つS&Jとの連携、そしてSMBCグループとの協業による新会社「SMBCサイバーフロント株式会社」の設立だ。金融インフラの現場で培われた知見と、チェンジグループの広範な事業基盤を掛け合わせることで、業界横断型の対策展開が可能になる。

また、グループ企業であるトラストバンクとの連携を活かし、全国1,700の地方自治体とのネットワークをセキュリティ事業に活かす構想も発表された。自治体向けサイバー演習や教育プログラムを展開することで、公共部門におけるセキュリティ格差の解消を図る。

証券取引を狙う攻撃──「3000億円規模」不正アクセスの実態

発表会の後半では、サイリーグHD エグゼクティブ・フェローであり、EGセキュアソリューションズ CTO の徳丸浩氏が登壇。2025年に入り発生しているオンライン証券を標的とした大規模な不正取引について、データと共に警鐘を鳴らした。

サイリーグホールディングス株式会社
エグゼクティブ・フェロー 徳丸 浩 氏

2025年1月から4月までの間に、少なくとも9社の証券会社で6,380件の不正アクセス、3,505件の不正取引が発生。被害は売却額ベースで1,612億円、買付額ベースで1,437億円に達し、メディアの一部では被害総額3,000億円超とも報じられた。

徳丸氏は、「このような大規模な不正は、オンライン証券にとって初の経験であり、既存の“出口対策”─名義一致制限による出金ブロック─では限界があることを示している」と指摘する。過去にはSBI証券で、偽造本人確認書類によって同姓同名の口座が開設され、1億円近い資産が流出する事件も発生している。

二要素認証の“神話”に終止符を。次の標準は「パスキー」

講演では、攻撃者が用いたとされる手法──フィッシングやマルウェア(インフォスティーラー)──が二要素認証(2FA)をすり抜ける仕組みについても解説された。

「2FAはもはや、万能ではありません。中間者攻撃(MITM)やトロイの木馬型攻撃では、認証情報だけでなくセッション自体を奪われます。“2FAを使えば安心”という信仰は、現実と乖離してきているのです」(徳丸氏)

その上で徳丸氏は、AppleやGoogle、Microsoftが導入を進める「パスキー(passkey)」の早期導入を強く提言。パスワードレスでの認証を実現し、フィッシング耐性が高いこの方式は、今後の金融業界・公共分野におけるスタンダードになりうると強調した。

「守る」から「支える」へ──社会の信頼インフラとしてのセキュリティ

サイリーグHDが目指すのは、単なるシステム対策の提供ではない。福留氏の言葉を借りれば、「守るべきは資産ではなく、社会の信頼そのもの」であり、DXとセキュリティを両輪とした“持続可能な社会”の実現こそが本懐である。

大企業だけでなく、中堅・中小企業、自治体、教育機関──あらゆる組織に対してセキュリティ支援の裾野を広げること。それが、サイリーグHDが掲げる「すべての組織にサイバーレジリエンスを」というビジョンの根幹だ。

今後の展開としては、金融分野にとどまらず、行政・医療・教育など多様なセクターへの展開も視野に入れる。組織の壁を越え、志ある「仲間」とともに築かれるこのセキュリティエコシステムは、日本のデジタル社会に不可欠な“新しい社会基盤”となるだろう。

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