サイバーレジリエンスとは?定義や重要性、導入のポイントを解説!
デジタル化が進んでいる昨今では、サイバー攻撃の多様化や巧妙化が問題視されており、単に「防ぐだけ」のセキュリティ対策では、被害を防ぎきれない時代に突入しています。
そうした中で注目されているのが、サイバーレジリエンスという考え方です。
今回は、サイバーレジリエンスの定義や重要性、導入のポイントについて詳しく解説していきます。
サイバーレジリエンスとは?
では早速、サイバーレジリエンスの定義と、従来型セキュリティとの違いについて詳しく見ていきましょう。
サイバーレジリエンスの定義
サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃を受けた際の「耐える力」と「立ち直る力」を示す概念です。
サイバー攻撃が多様化・巧妙化している昨今において、攻撃を完全に防ぐのは難しいという前提に立ち、攻撃を受けたあとの被害や影響を最小限に抑え、速やかに復旧することに主眼を置いています。
サイバーレジリエンスと従来型セキュリティとの違い
従来型セキュリティでは、社内と社外を境界線で区切り、外部からの攻撃を防ぐことを目的としていました。
しかし、現在においてはクラウドサービスの普及などに伴い、社内外からアクセスされるケースも多く、これまでの考え方では十分な対応が難しくなっています。
そこで役立つのが、サイバーレジリエンスです。
全てを信頼しないという「ゼロトラスト」という考え方をベースに、攻撃を受けたあとの対応まで視野に入れた包括的なアプローチを採用しています。
ゼロトラスについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
(※ゼロトラストセキュリティの記事の内部リンク推奨)
サイバーレジリエンスの重要性が高まっている理由
サイバーレジリエンスは、日本だけでなく世界各国で注目されています。
その理由は、以下の通りです。
・サイバー攻撃の対象領域が拡大しているから
・サプライチェーンリスクが高まっているから
・サイバー攻撃が「ビジネス」として確立され始めているから
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
サイバー攻撃の対象領域が拡大しているから
近年のサイバー攻撃は、特定の大企業や官公庁だけでなく、中小企業や医療機関、教育機関や自治体など、あらゆる組織を標的としています。
攻撃対象も、ネットワークやサーバーだけでなく、クラウド環境やスマートデバイス、IoT機器やメールアカウントなど多岐にわたります。
こうした背景から、全てを守るのは現実的に困難となり、攻撃を受けた際にどう立て直すかという視点、すなわち「サイバーレジリエンス」の考え方が重要になってきているのです。
サプライチェーンリスクが高まっているから
自社のセキュリティ対策を完璧にしたからといって、サイバー攻撃から確実に逃れられるとは限りません。
なぜなら、取引先や業務委託先など、サプライチェーン上のセキュリティが脆弱なケースもあるからです。
このような場合、先方の脆弱なセキュリティを踏み台にして、自社が攻撃される可能性もあります。
特に中小企業は、大手企業の「弱点」として狙われやすく、影響が連鎖的に波及する恐れもあるため注意が必要です。
サイバー攻撃が「ビジネス」として確立され始めているから
サイバー攻撃は、今や「ビジネス」として成立してしまっています。
ランサムウェアによる身代金要求や情報窃取による転売、DDoS攻撃による業務妨害など、金銭目的の攻撃はより計画的かつ執拗です。
これまでのような単なる「愉快犯」ではなく、経済的打撃を狙った組織的犯行に対抗するには、従来のセキュリティだけでは不十分であり、被害を前提に備えるレジリエンスの視点が必要不可欠となっています。
サイバーレジリエンスにおける重要な能力4選
サイバーレジリエンスにおいては、以下4つの能力が重要だとされています。
・予測力
・抵抗力
・回復力
・適応力
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
予測力
予測力とは、将来起こり得る脅威やリスクを事前に見抜き、対策を講じておく力を指します。
サイバー攻撃は、日々高度化・巧妙化しており、既存の手法だけでは防ぎきれない時代です。
いつ襲ってくるかわからないサイバー攻撃の脅威に備え、事前に脆弱性診断や脅威インテリジェンスの活用、最新の攻撃トレンド分析などを行うことで、不測の事態に備えられます。
抵抗力
たとえサイバー攻撃を受けたとしても、被害が業務全体に波及しないような「耐性」を備えていれば、大きなダメージは受けません。
たとえば、アクセス権限の最小化やシステムの分離構造などによって、一部のシステムが侵害されても全体が崩壊しないように設計されていれば、攻撃によるインパクトを最小限に抑えられます。
これは、ゼロトラストの考え方にも通じる極めて重要な要素です。
回復力
回復力とは、システムやサービスを迅速かつ安全に復旧させ、事業継続を図る力のことです。
サイバー攻撃を100%防ぐことが不可能である以上、被害を受けたあと、いかに早く業務を復旧できるかが重要なポイントとなります。
具体的には、インシデントレスポンス体制の整備や災害復旧計画(DR/BCP)、クラウドバックアップの仕組みなどが求められます。
早期復旧は、顧客からの信頼獲得など、企業価値を守る上でも重要な施策です。
適応力
サイバー空間は常に変化し続けており、新たな攻撃手法や技術が次々に登場しています。
適応力とは、こうした環境の変化や新しい課題に柔軟かつ迅速に対応できる能力のことです。
セキュリティポリシーの見直しや従業員教育のアップデート、最新ソリューションの導入など、変化を前提とした運用がカギとなります。
サイバーレジリエンスを導入するときのポイント
サイバーレジリエンスの導入・強化は、以下のステップに沿って行うのがおすすめです。
ステップ1:現状把握とリスク評価
ステップ2:体制構築と計画策定
ステップ3:実装と運用
ステップ4:人材育成
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
ステップ1:現状把握とリスク評価
サイバーレジリエンスの導入は、自社のIT環境やセキュリティ状況を正確に把握するところから始まります。
ネットワーク構成や利用しているクラウドサービス、従業員のITリテラシーなど、現状の把握を徹底しましょう。
そのうえで、どのようなサイバー脅威が自社にとってリスクとなり得るかを分析し、業種や業態に応じた脅威モデルを作成します。
リスクの重要度を可視化することで、優先的に取り組むべき課題が明確になります。
ステップ2:体制構築と計画策定
現状把握とリスク評価が完了したら、続いては体制構築と計画策定です。
経営層を巻き込んだ指揮系統の明確化や、セキュリティインシデント対応チームの設置など、組織として対応できる仕組みを整えましょう。
その他、インシデント発生時の対応マニュアルや事業継続計画を策定することも、サイバーレジリエンスにおいてとても重要です。
ステップ3:実装と運用
体制が整ったら、具体的なセキュリティ対策を実装し、日常業務に組み込みます。
ファイアウォールやエンドポイント検知、ログ監視システムなどの技術的対策に加え、クラウド環境やリモートワークにも対応できる柔軟なインフラを構築しましょう。
導入した対策は、形式的に終わらせるのではなく、継続的にモニタリングし、効果を検証・改善することが大切です。
PDCAを回しながら、状況に応じて柔軟に運用をアップデートしていく姿勢が、サイバーレジリエンスの要となります。
ステップ4:人材育成
サイバーレジリエンスは、技術やシステムだけで成立するものではありません。
最も重要なのは、それらを使いこなせる「人材」です。
全ての従業員に対してセキュリティ教育や啓発活動を定期的に行い、サイバーリテラシーを底上げすることが必要になってきます。
サイバーレジリエンスを高めるうえでの注意点
サイバーレジリエンスを高める際は、以下の点に注意が必要です。
・企業全体で取り組む
・データバックアップを行う
・自社に合ったセキュリティサービスを活用する
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
企業全体で取り組む
サイバーレジリエンスの導入・強化は、IT部門だけの課題ではありません。
企業全体のレジリエンスを強化するためには、経営層から現場まで一貫した意識改革が必要です。
特に、経営陣がセキュリティに対する理解を深め、予算や人材確保に積極的に取り組むことによって、組織全体の姿勢を形成できます。
また、各部門がそれぞれの業務プロセスに即した対策を実施し、相互連携を強めることで、全社的なセキュリティ文化を構築しやすくなります。
サイバーレジリエンスを導入・強化するときは、部分最適ではなく、全体最適を意識して取り組みましょう。
データバックアップを行う
サイバーレジリエンスでは、攻撃を防ぐだけでなく、攻撃を受けた際の迅速な復旧も重視する必要があります。
そこで大事なのが、データバックアップです。
定期的にバックアップを取っておくことで、仮に攻撃を受けたとしても素早く復旧できます。
クラウドストレージや外部メディアなどを活用し、多層的なバックアップ体制を整えておきましょう。
自社に合ったセキュリティサービスを活用する
サイバー攻撃の手法は多岐にわたるため、自社の業種や規模、業務内容に応じたセキュリティサービスを選定することが大切です。
例えば、中小企業であれば導入が容易なクラウド型のセキュリティソリューションが有効ですし、顧客情報を大量に扱う企業ならデータ暗号化やアクセス制限の強化が必要不可欠です。
近年では、サイバーレジリエンスへの注目が高まっていることもあり、さまざまなサービスが登場しています。
それぞれで特徴が大きく異なるため、目的やコストなどを加味しつつ、自社に最適なツール・サービスを探していきましょう。
まとめ
サイバーレジリエンスは、企業の持続的な成長と信頼性を支える重要な施策です。
サイバー攻撃は今後も多様化・巧妙化していくことが予想され、リスクをゼロにすることは不可能です。
だからこそ、攻撃を防ぐだけでなく、攻撃を受けた際の被害を最小限に抑える工夫が必要になります。
デジタル化が進んでいる昨今では、業種や業界、規模を問わず、全ての企業にサイバー攻撃のリスクが潜んでいますので、できるだけ早くサイバーレジリエンスの導入や強化を進めていきましょう。