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Gartner 2026年ネットワークトレンドを発表

ガートナージャパン株式会社(以下、Gartner)は、2026年にITリーダーが注目すべきネットワークトレンドを発表した。生活やビジネスを取り巻く環境では「すべてがつながる」ことが前提となりつつあり、企業や組織のテクノロジ・リーダーには、自社システムだけでなく、顧客やパートナーとの関係も含めたネットワークを快適かつセキュアに保つことが求められている。

「すべてがつながる」企業ネットワーク像

これからの企業ネットワークの全体像として、自社内のITだけではなく、顧客・パートナーを含む広範なつながりを前提とした構成が構成が求められている。オンプレミスのシステムやクラウドサービスだけでなく、工場や店舗などの現場とクラウド側の分析基盤をつなぎ、さらに顧客やビジネスパートナーの環境とも連携することが当たり前になる姿である。

Gartner バイス プレジデント アナリストの池田 武史 氏は、「ネットワークは社内だけではなく、顧客やパートナーをつなぐ重要なインフラ」であると位置付けたうえで、AIの処理に適した高速・低遅延の機器やサービス、非地上系ネットワーク(NTN)のような新たな通信サービスも視野に入れる必要性を指摘する。インフラを統括するリーダーには、こうした「トレンドを戦略的に取り入れ、より良い意思決定や判断、提案をタイムリーに提供するサービスの実現を目指すことが重要である」としている。

ゼロトラスト・ネットワークへのチャレンジ

企業ネットワークのアーキテクチャは、従来の閉域網中心からクラウド中心のアーキテクチャへと移行している。その中核を担うのが、セキュア・アクセス・サービス・エッジ(SASE)などの仕組みによる論理的なアクセス・コントロールである。日本国内でも、2025年時点で4割近い企業がセキュリティ・サービス・エッジ(SSE)やSASEといったサービスの利用を開始していると説明されている。

一方、サイバー攻撃の脅威が高まるなかでは、インターネット側だけでなくオンプレミスの領域においても、従来のネットワーク・セグメンテーションにとどまらないゼロトラスト・ネットワークが求められている。池田氏は、「ゼロトラストはインターネット領域の対策としてはすでに広がりつつあるものの、オンプレミスへの適用はこれからの課題」であると指摘する。

特に、オンプレミスでは機能や役割ごとの大まかなセグメンテーションですら十分でないケースも見られるとし、データセンター、オフィス、工場などのOT(オペレーショナル・テクノロジ)といった単位でセグメントを分け、さらにその内部をサブセグメントに分割するアプローチが現実的かつ重要であると述べる。そのうえで、重要なデータや資産が集まる領域では、マイクロセグメンテーションを適用することが推奨されるとしている。

ITとOT / IoT / CPSの連携と保護

Gartnerが2025年2月に実施した調査では、ITとOTなどのネットワークについて「ファイアウォールなどで分離している」と回答した企業が約半数に上ったと紹介されている。一方で、OT / IoT / CPS(サイバー・フィジカル・システム)に関しては、経営層や事業部門から次のようなニーズがあると整理されている。

  1. 稼働状況をタイムリーに把握したい
  2. OT / IoT / CPSのシステムをIoTやAI、クラウドで効率化したい
  3. OT / IoT / CPSシステムのリモート・メンテナンスをパートナーに任せたい

こうしたニーズを背景に、OT / IoT / CPSとITのネットワークをどのように統合・分離するべきかという議論が活発になっていると説明される。

池田氏は、「すべてがつながる世界」では、自社内で稼働するシステムとの連携だけではなく、自社外で稼働するシステムとの連携も求められると指摘する。その際には、IT部門のネットワーク(IT)と事業部門のネットワーク(OT / IoT / CPS)の連携方法だけでなく、そのセキュリティ対策についても検討が必要であると述べている。

自動化・省力化とネットワーク運用の変化

これまで、多くの企業ではシステム資産が自社内に存在する前提でネットワーク機器や回線の構築・運用を行ってきた。その結果、企業ネットワークは境界の内側と外側を分ける構成を重視し、境界の内側にあるシステムのセキュリティ対策が手薄になりがちであったと振り返っている。

現在は、あらゆるリソースが常にセキュアであることが求められ、ゼロトラストを前提としたアクセス・コントロールが当たり前になりつつある。そのため、ネットワークに携わるチームに求められる役割やスキルも変化していると指摘する。

今後は、生成AIやAIエージェントといったテクノロジの進展により、インフラやアプリケーションのアーキテクチャ、構築・運用ツールが大きく進化し、自動化や省力化が進展する見通しである。ネットワーク担当者の作業内容も変わり、ユーザーが快適にサービスを利用できているか、不審なトランザクションが起きていないかといった観点から、ネットワーク全体を把握することが重要なミッションになるとまとめている。

池田氏は、「IT部門にとってネットワーク障害対応は複雑で負荷の高い業務であるが、それらを回避・軽減するために、ネットワーク構築や運用の自動化・省力化を積極的に取り入れ、社内のデジタル化を支えるノウハウを習得する必要がある」と述べる。また、今後の企業ネットワークでは、機器や回線といったインフラそのものの監視よりも、その上を流れるトラフィックの監視・分析がより重視されるとし、これが提供するサービスの価値評価にもつながると指摘している。

そのうえで、ネットワークを担うスタッフには、新たなネットワーク装置のトレンドだけでなく、セキュリティ、クラウド、AIといった周辺テクノロジに関するスキルの獲得に注力すること、そして新たな活躍の場となるキャリアプランも描いておくことが重要だと強調した。

出典:Gartner、2026年にITリーダーが注目すべきネットワーク・トレンドを発表

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