世界を覆うサイバー脅威とAIリスク
チェック・ポイント・リサーチ(以下CPR)は、2025年11月のグローバル脅威インテリジェンスレポートを発表した。組織が受けたサイバー攻撃は週平均2,003件で、10月から3%増、前年同月比でも4%増となり、ランサムウェア攻撃の活発化と生成AIツール利用による情報漏えいリスクの高まりが、世界の攻撃状況に影響していることが示された。
業界別では教育・研究と団体・非営利が標的
最も大きな打撃を受けている業界は教育・研究分野であり、組織あたり週平均4,656件の攻撃(前年比7ポイント増)を受けている。次いで政府・軍関係が2,716件(前年比2ポイント増)、団体・非営利組織が2,550件(前年比57ポイント増)となっている。

地域別ではラテンアメリカと北米が突出
地域別では、ラテンアメリカが週平均3,048件(前年比17ポイント増)で最多となり、アジア太平洋地域(APAC)は2,978件(前年比0.1%減)、アフリカは2,696件(前年比13ポイント減)である。ヨーロッパは前年比1ポイント減、北米は前年比9ポイント増となり、高度で金銭目的の脅威グループの主要標的となっている。

この1年間、地域ごとの攻撃件数は収束傾向にあり、最も攻撃を受ける地域と最も少ない地域の差は約3倍から約2倍まで縮小している。
生成AIツールが新たな盲点に
企業で生成AIツールの利用が進む一方、そのセキュリティリスクも深刻化している。2025年11月の調査では、生成AIへのプロンプト35件に1件が機密データ漏えいの高いリスクを抱え、生成AIを日常的に利用する組織の87%に影響していた。プロンプトの22%には、内部通信や企業データ、機密コード、個人情報などの機密情報が含まれている可能性がある。
組織では平均して月間11種類の生成AIツールが使われているが、多くは監視されておらず、セキュリティガバナンス外で運用されている。不適切な利用は、認証情報や知的財産の流出などを招き、攻撃対象領域を拡大させている。
ランサムウェア被害22%増と主要グループ
2025年11月には727件のランサムウェア被害が報告され、前年同月比22%増となった。北米が公表事案の55%を占め、ヨーロッパが18%で続く。国別では、アメリカが被害の52%、イギリスが4%、カナダが3%である。


業界別では、製造業が被害の12%で最も大きく、ビジネスサービスが11%、消費財・サービスが10%となっている。

最も活発なランサムウェアグループはQilinとClopで、公表された攻撃の15%を占めた。Akiraが12%で続く。
チェック・ポイントの見解
CPRは、世界的なサイバー攻撃件数とランサムウェア被害件数の増加に加え、生成AIツールの普及が新たな盲点となり、機密データの漏えいや「シャドーAI」の拡大が攻撃の入り口になっていると総括する。ランサムウェアグループは、こうした機会と高度化するインフラを背景に、地域や業界、重要サービスの垣根を越えて攻撃範囲を広げている。
レポートは、防御側に対し、事後対応型ツールだけでは不十分であり、防止と阻止を優先するセキュリティと強力なデータ保護、AI利用に関する明確なガバナンスを求めている。攻撃者が急速に進化する現在、“先手を打つこと”は組織のレジリエンスを左右する鍵であると結んでいる。
出典:PRTimes チェック・ポイント・リサーチ、2025年11月の主要なサイバー脅威を発表 日本の大手飲料メーカーを攻撃したQilinが前月に続き最も活発に活動するランサムウェアグループの首位に
