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【広島市立大学など】IoT・ウェアラブルデバイスの「センサ信号のコンテナフォーマット」の国際標準化へ

公立大学法人広島市立大学、TIS株式会社、株式会社エー・アンド・デイ、帝人株式会社の4者が中心となり「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット※1」に関する国際標準規格の提案を行い、IEC※2において、2021年12月に承認された。今後は、IEC 63430として2023年度の発行を目指して規格文書の完成度を上げる作業と審議を行っていくと発表した。

これを機に、ウェアラブルデバイスを始めとする広範なIoT・サービスに係る事業者・関係者と幅広く連携し、今後の普及拡大に向け様々な施策を推進していくとしている。

【概要、背景】

近年、日常生活での体調管理や運動時の活動測定などを目的としたIoT・ウェアラブルデバイスの普及・利活用が急速に拡大する一方で、取り扱う信号の形式などがメーカーや機器ごとに異なるため、”メーカーA社とメーカーB社の機器を同時に接続できず、データ連携や共有がしづらい”など、利便性に多くの課題を抱えている。

4者は、経済産業省公募※3による「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」の採択を契機として、ウェアラブルデバイスでの上位レイヤーから下位レイヤーまでのセンサ信号を共通的に処理できるよう、信号のやり取りを「コンテナ」化する技術仕様一連の標準化準備(国際標準規格案策定)作業を行ってきた。そして2021年10月に、IECのTC100※4に対し、新規国際標準規格として「ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術」の提案を行い、同年12月に承認された。

コンテナフォーマット技術によって標準化されたセンサ信号が流通することで、様々なIoT・ウェアラブルデバイス間の接続性が高まり、測定したデータを容易に共有・連携することが可能となる。4者は、国内外のエキスパート・専門家と議論しながら、引き続き国際標準発行に向け活動するとしている。

【ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術概要】

「コンテナフォーマット」は、ウェアラブルセンサ信号に係る互換性や5Gシステムと連携するIoTへの適応性を高め、データの共有・利活用を柔軟に行える、標準化の核となる技術である。

Sensor Device(測定)Sensor Deviceは、センサ素子が得る信号をデジタルデータに変換して、Edge Computing Deviceに送出する。
Edge Computing Device(計算)Edge Computing Deviceは、Sensor Deviceから受け取ったデジタルデータを「コンテナ」化する。以降はコンテナフォーマットをベースとして計算処理を行う。
Repository(収納)Repository(サーバー)は、Sensor Deviceからの情報に基づき、データの構造情報を提供する。
Viewer(閲覧)クラウド・ネットワークを経由し、Viewerで、測定値を可視化する。
(図1)ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術 概念図

【利活用分野・領域】

多様なIoTサービスやウェアラブルデバイスと親和性の高いウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、先ず「ヘルスケア・医療」領域での活用を想定する。

Society5.0で目指す超スマート社会の実現には、”高齢者対策に資するサービスの開発やニーズの掘り起こし”が重要課題と目されており、AAL※6の重要性が一層高まると予想されている。しかし一方で、AALに係るセンサやデバイスのメーカー・システム開発企業が各々別個に開発を進め、ソリューション・サービス事業者も各々への個別適応に終始する取り組みのままでは、実現スピードが遅滞し早期の事業規模拡大への懸念も生じかねない。

国際標準規格を採用することで、自社の製品やサービスと他社との連携において迅速かつ主導的な展開が図れるとともに、国内はもとより海外と共通のデバイス、システムやサービスを構築することができ、国内で成功したモデルをグローバルに展開することが容易になるとしている。

標準化されたウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術は、製造、流通、金融、建設、運輸、サービス、エネルギー、公共など社会の様々な分野・領域への適用が可能であり、「スマートシティ」実現のキーテクノロジーの一つとして広範に普及活用されることによって、事業の競争力強化や新たな市場の創造が実現するとのことだ。 

(図2)ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術が拓く未来像

【今後の展望】

今後は、2023年の国際規格発行に向けた諸活動と並行して、リファレンス・システム※7の開発を計画しているようだ。さらに、デバイスをはじめプラットフォーム、ソリューションなどウェアラブルセンサ信号を利活用しうるユーザー・関係諸団体など幅広い層の参画を念頭に、ウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の普及に向けた組織の設立を検討している。

※1 Data Container format for wearable sensor
※2 IEC:International Electrotechnical Commission(国際電気標準会議)
※3 (経済産業省:令和2年度 募省13)省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットに関する国際標準化」(令和2年度から3年間)
※4 IEC TC(Technical Committee)100:オーディオ、ビデオ、マルチメディアシステムおよび機器の技術分野に関連する国際標準化を担当する技術委員会
※5 BAN:Body Area Networkは、人体の周囲にネットワークを構築することで、バイタルサイン等データ測定適所に装着した複数センサの計測情報を集約する近距離無線通信技術。
代表的な規格として「SmartBAN(スマートバン)」が挙げられる。
SmartBANは、複数センサを連携させ情報を統合する「高精度な時間同期」のほか、医療・ヘルスケア用途での信頼性の高い通信に不可欠な、生体情報に応じた許容誤り率での「最適伝送」、生体の異常に係る緊急信号の「低遅延伝送」、混信など他人との「干渉回避」、充電を削減し長時間使用できる「低消費電力化」、スイッチを入れると直ぐに使用できる「短時間での初期接続」 など数々の特長を有している『次世代ボディエリアネットワーク無線通信規格』である。
なおSmartBANは、2015年にETSI(欧州電気通信標準化機構)で標準規格化されており、IECにおいてもIEC 63203-801-1及びIEC 63203-801-2として2022年中に規格書発行予定。
※6 AAL:Active Assisted Living(自立生活支援)
※7 リファレンス・システム:考案したウェアラブルセンサ信号コンテナフォーマット技術の機能や実装の検証用システム

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