暗号を理解するための数学の世界 CS四方山話(第38話)
「小学校からの数学」シリーズ・第17弾です。前回予告の通り、今回から小学校からの最終学年、小学6年生です。今回は「分数」について扱います。
小学校の算数での「分数」
最終学年ですので、小学校の算数での分数について振り返りましょう。分数の概念と表記は古代エジプト(※1) で登場しますが、小学校の算数では、分数は2年生で初登場します。そして、毎学年で登場します。ざっとまとめると次の通りです。
- 2年生:分数の概念、簡単な分数(1/2, 1/4など)
- ちなみに、この簡単な分数、つまり分子が「1」の分数、つまり単位分数は、古代エジプトで登場する分数と同じです。
- 3年生:分数の基礎(割り算、小数点、分数など)
- 4年生:通分
- 5年生:約分
そして6年生では、分数のかけ算、分数のわり算が登場します。
分数のかけ算
いくつかのパターンに分けます(小学校でもそのように教えているようですので)。
分数 × 整数:
3 7 × 4 = 12 7 ← 分子に整数を掛けるだけのパターン
3 8 × 4 = 3 2 ← 分子に整数を掛けて、約分するパターン
3 8 × 16 = 6 ← 分子に整数を掛けて、約分し、結果が整数になるパターン
分数 × 分数:
3 7 × 4 5 = 12 35 ← 分子・分母をそれぞれ掛けるだけのパターン
3 8 × 4 5 = 3 10 ← 分子・分母をそれぞれ掛けて、約分するパターン
3 8 × 16 3 = 3 ← 分子・分母をそれぞれ掛けて、約分し、結果が整数になるパターン
帯分数 × 整数:
1 3 7 × 4 = 10 7 × 4 = 40 7 = 5 5 7 ← 分子に整数を掛けるだけのパターン
1 3 8 × 4 = 11 8 × 4 = 11 2 = 5 1 2 ← 分子に整数を掛けて、約分するパターン
1 3 8 × 16 = 11 8 × 16 = 22 ← 分子に整数を掛けて、約分し、結果が整数になるパターン
分数 × 小数:
3 7 × 0.4 = 3 7 × 4 10 = 3 7 × 2 5 = 6 35 ← 分子に小数を掛けるだけのパターン
3 8 × 0.4 = 3 8 × 4 10 = 3 8 × 2 5 = 3 20 ← 分子に小数を掛けて、約分するパターン
3 8 × 1.6 = 3 8 × 16 10 = 3 8 × 8 5 = 3 5 = 6 10 = 0.6 ← 分子に小数を掛けて、約分し、結果を小数にするパターン
分子、分母に分かれていますが、基本的にそれぞれが整数の計算で、そこに(分子、分母共通の約数を消す)約分という操作が加わるということです。
帯分数も、小数も、真分数(分子が分母より小さい分数)か仮分数(分子が分母と等しいか、分子が分母より大きい分数)に変換すれば、上記の手順に持ち込めるので同じことです。
分数のわり算
分子のわり算は「割る分数の分子・分母を逆にする」という操作が加わるだけで、そこから先はかけ算と同じです。
「割る分数の分子・分母を逆にする」の意味は、以下の通りです。
数値 ÷ 分子/分母 = 数値 ÷ ( 分子 ÷ 分母 ) = 数値 ÷ 分子 x 分母 = 数値 x ( 分母 ÷ 分子 ) = 数値 x 分母/分子 かけ算のときと同じように、パターン分けしましょう。
分数 ÷ 整数:
3 7 ÷ 4 = 3 28 ← 分母に整数を掛けるだけのパターン
3 8 ÷ 6 = 1 16 ← 分母に整数を掛けて、約分するパターン
分数 ÷ 分数:
3 7 ÷ 5 4 = 3 7 × 4 5 = 12 35 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分子・分母をそれぞれ掛けるだけのパターン
3 8 ÷ 5 4 = 3 8 × 4 5 = 3 10 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分子・分母をそれぞれ掛けて、約分するパターン
3 8 ÷ 3 16 = 3 8 × 16 3 = 2 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分子・分母をそれぞれ掛けて、約分し、結果が整数になるパターン
帯分数 ÷ 整数:
4 3 5 ÷ 3 = 23 5 ÷ 3 = 23 15 = 1 8 15 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分母に整数を掛けるだけのパターン
2 5 8 ÷ 3 = 21 8 ÷ 3 = 7 8 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分母に整数を掛けて、約分するパターン
分数 ÷ 小数:
3 2 3 ÷ 0.3 = 11 3 ÷ 3 10 = 11 3 × 10 3 = 110 9 = 12 2 9 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分母に小数を掛けるだけのパターン
2 3 5 ÷ 0.3 = 13 5 ÷ 3 10 = 13 5 × 10 3 = 26 3 = 8 2 3 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分母に小数を掛けて、約分するパターン
4 1 5 ÷ 0.3 = 21 5 ÷ 3 10 = 21 5 × 10 3 = 7 × 2 = 14 ← 割る分数の分子・分母を逆にして、分子に整数を掛けて、約分し、結果が整数になるパターン
分数の比較
分数同士の比較という課題も、小学6年生で登場します。
「 と
とどちらが大きいでしょう?」という問題です。
皆さんはどうするでしょうか? 目の前に電卓があれば..。最近、物理の電卓を見かける機会は減りましたね。言い換えますと..。スマートフォンやPCの電卓アプリが目の前にあれば、計算してみますよね? 筆者であればそうします。というか、そうしました。
2 3 ≒ 0.6666666…
11 17 ≒ 0.6470588…
2 3 > 11 17 ということですね。
小学校の学習では、分数同士の比較で行います。分母を同じにする「通分」ということですね。
2 3 = 34 51 > 33 51 = 11 17
まとめ
今回は、小学6年生の課程で登場する「分数」に関して取り上げました。さて次回(第39話)は「並べ方と組み合わせ方」に関して学びます。小学6年生で「順列組合せ」が登場するのですね。引き続き、ご購読頂ければ幸いです。
また、「CS四方山話」の電子書籍 第1段「サイバーセキュリティ四方山話 VOL.1」は、2024年10月1日に ConTenDo さんから発売になっております。こちらも、よろしくお願い致します。
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第2段も鋭意執筆中です!まだ進行中です (^^;; 進捗が捗々しくなくてスミマセン..。
補足
(※1) 古代エジプトの分数
古代エジプトの「神聖文字(ヒエログリフ)」では、基本的には単位分数を使います。数字の上に「目」ような形状の記号を置くと、それは単位分数になります。1/2 と 2/3 だけは例外で、特別なグリフがあります。図は、筆者が手書きしたものですので、雑な部分はご容赦ください。

分母が異なる単位分数の和を「エジプト分数」と呼びます。
さまざまな分数は、エジプト分数で表すことが可能です。 例えば、下記の通りです。
6 7 = 1 2 + 1 3 + 1 42
数学的な表現をすると「任意の有理数は単位分数の和で表せる」ということになります。
証明としては「調和級数が発散する」ことを利用するのですが、ここで詳説すると長くなりますし、小学校の範囲を大幅に逸脱しますので、証明は省略させて頂きます。
雑談
この「雑談」を第38話の仕上げとして、執筆しているのは4月上旬です。桜の季節もそろそろ終わりです。それは名残惜しいのですが、個人的に今年は花粉症が辛かったので、その時期がもう少しで終わると思うと明るい気分になります。初夏から夏に、いくつか楽しみなイベントも待っていますし。
5月には、山口のサイバーセキュリティ対策センター(CSCC)恒例の「春BBQ」があります。CSCCのメンバは5月で30名を超えるので、より盛大になるでしょう。6月には、湯田温泉こんこんパーク」(https://www.konkon-park.com/)がオープンします。単なる温浴施設ではなく、全天候型の大屋根広場、多目的スペース、デッキスペース、芝生広場・噴水広場などもあります。筆者の(山口の)自宅から徒歩2分という点も個人的なメリットです。
そして、8月には、CSCCとしての大きなイベントを開催します。この件に関しては「CS四方山話」でも、今後ご案内して行きます。お楽しみに!
サイバーセキュリティ四方山話の過去の記事はこちら(合わせてお読みください)

中村 健 (Ken Nakamura)
株式会社SYNCHRO 取締役 CTO
機械屋だったはずだが、いつの間にかソフト屋になっていた。
以前は計測制御、知識工学が専門分野で、日本版スペースシャトルの飛行実験に関わったり、アクアラインを掘ったりしていた。
VoIPに関わったことで通信も専門分野に加わり、最近はネットワークセキュリティに注力している。
https://www.udc-synchro.co.jp/
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