製造業の成長鍵はサービス化とAI
産業用AIソフトウェアのリーディングプロバイダーであるIFSは、アクセンチュア社と共同で実施した最新グローバル調査レポート「The State of Service 2025: Manufacturing Transformation Report（サービスの実態2025：製造業の変革）」を発表した。本調査は、製造業における「モノ」から「コト（サービス）」への構造転換が加速し、サービスが戦略的な収益エンジンへと位置づけを変えている事実を示すものである。
サービス化が長期成長の中核である
レポートは、製造業界の上級幹部800名のインサイトに基づき、産業用AI、サービタイゼーション、サステナビリティが競争様式・業務運営・価値提供を再定義していると結論づける。なかでも39%が「サービタイゼーション（サービス化）」を長期的成長の中心に据えると回答しており、サービスはもはや“サポート機能”ではなく戦略中核であることが明確になった。
AI優先の一方で“全社展開”に壁がある
63%が将来の成長のためにクラウドやAIなどの最新技術を優先事項に挙げる一方、AI活用の全社スケールにはギャップが残る。サービス提供にAIを利用している企業は96%に上るが、その約4分の3が組織全体へのスケールアップに未到達である。障壁としては、データ品質のガバナンス、サイバーセキュリティ、既存システム統合が挙げられている。
人材の再教育とスキル変革が喫緊の課題である
98%の製造業者が労働力不足を報告し、社内能力開発への圧力が高まっている。対応として、社内研修、eラーニング、大学との連携、部分的自動化などの施策が実行されている。サービス主導の成長へ移行するうえで、現場とバックオフィスの両面でスキル再設計が欠かせないことが示された。
サステナビリティは戦略優先、循環型経済を実装する
97%の製造業者にとってサステナビリティは戦略的優先事項である。79%がサービス活動からの排出量を追跡しており、再生部品の活用や予知保全などを通じてサーキュラーエコノミー（循環型経済）の実践を事業へ組み込んでいる。サービス起点の排出管理と資産ライフサイクルの最適化が、競争力と持続性の同時達成に資する構図である。
サプライチェーン混乱とレジリエンスの現実
過去1年で95%がサプライチェーンの混乱から影響を受けた一方、自社の回復力に「非常に自信がある」のは32%にとどまる。サービスを中核とする経営へ転じつつ、回復力（レジリエンス）の強化はなお途上であることが浮き彫りになった。
経営トップ／パートナーの見解
IFSのCEO マーク・モファット氏は、「94%の製造業者が新しいサービスモデルが既に事業へ影響していると報告している事実を踏まえ、産業用AIとサステナビリティが、よりスマートかつ迅速でパーソナライズされたサービス提供の中心的役割を担う」と述べる。アクセンチュアのEMEAインテリジェント・アセット・マネジメント・リード ゲルト・ミュラー氏は、「あらゆる顧客接点でのインテリジェンス活用が求められ、迅速なイノベーション、スマートな最適化、高度なサービスが競争優位を生む」と指摘する。
主要ポイント（調査結果の要点）
・AI本格展開は28%：多くは試験導入から本格展開への過渡期であり、データ・セキュリティ・統合が主要障壁である。
・人材強化の実装：社内研修／eラーニング／大学連携／部分的自動化といった多層的アプローチが進む。
・循環型経済の定着：排出追跡79%、再生部品活用、予知保全でサステナビリティの実装を拡大。
・レジリエンスの課題：混乱影響95%に対し、高い自信32%でギャップが残る。
いま何をすべきか（レポートが示す方向性）
レポートは、サービスの近代化（モダナイゼーション）を急ぐ必要性を強調する。すなわち、AIの本格展開（スケール）を阻む課題の解消、新しいサービスモデルの事業組み込み、そして人材・サステナビリティ課題への同時対応に成功した企業こそが、次世代の産業競争力を定義していくと結ぶ。
調査結果の全容については、レポート全文(英語)をご確認いただきたい。
