その「思い込み」がリスクになる? IPAがOSS活用のバイアスに警鐘
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2025年2月25日、オープンソースソフトウェア(OSS)に対する組織的な誤解や無意識のバイアスを解消するためのガイドブック
「その『思い込み』がリスクになる?OSSに対する誤解を解く5つの処方箋」 を公開した。
クラウドサービス、スマートフォンアプリ、業務システムなど、あらゆるデジタル基盤にOSSが組み込まれている現在、OSSはもはや「安価な代替品」ではなく、イノベーションの中核を担う存在となっている。一方で、誤解や思い込みが組織のリスクを高める要因になっているとIPAは指摘する。
OSSを巡る“無意識のバイアス”
ガイドブックでは、OSSに対する代表的な誤解として次のような例を挙げている。
- 「無償だから品質やセキュリティが低い」
- 「インターネット上のコードは自由に使ってよい」
- 「OSS活動は業務外で行う個人の趣味」
こうした認識を放置すれば、有用な技術の導入遅延という機会損失を招くだけでなく、ライセンス違反やセキュリティ事故といった重大リスクにつながりかねない。さらに、OSSに取り組む文化の欠如は、優秀なエンジニアの採用・定着にも影響を与える可能性がある。
IPAは、これらの課題は個人の努力だけでは解決できず、組織全体でのカルチャー変革とガバナンス整備が不可欠だと強調する。
OSPOを起点とした組織的アプローチ
本ガイドブックは、OSSに関する5つの代表的バイアスを取り上げ、それぞれに対する具体的な「処方箋」を提示する構成となっている。
その実践の鍵として示されるのが、OSPO(Open Source Program Office)の役割だ。OSPOは、OSSの利用・管理・貢献を戦略的に推進する専門組織であり、単なる統制部門ではなく、社内外をつなぐ「橋渡し役」としての機能を担う。
OSS活用を個人任せにするのではなく、明確なルールやプロセスを整備することが、安全かつ戦略的な活用の第一歩となる。
エンジニアから経営層までを対象に
本ガイドブックの対象はエンジニアに限定されない。
- エンジニア・開発者:ライセンスやセキュリティリスクを理解し、自信を持ってOSSを選定したい層
- プロジェクトマネージャー・リーダー:開発効率とガバナンスの両立を図りたい層
- 経営層・財務部門:OSSを「コスト削減」ではなく競争力向上の投資と捉えたい層
- 法務・人事・DX推進部門:リスク管理と人材戦略の両面からOSSを活用したい層
といった、「組織としてOSSに関わるすべての関係者」を想定している。
CC BY 4.0で公開、二次活用も可能
本ガイドブックの著作権はIPAに帰属するが、Creative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)の下で提供されている。出典表示を行えば、組織内研修や社内資料への活用、二次的な情報発信も可能だ(第三者著作物部分を除く)。
「思い込み」が最大のリスクに
OSSはすでに社会基盤の一部であり、利用の可否を議論する段階ではない。問われているのは、どのように統制し、どのように戦略的に活用するかである。
IPAの今回の取り組みは、技術論ではなく「認識のアップデート」を出発点に据えた点に特徴がある。
サイバーセキュリティリスクの低減とイノベーション促進を両立するために、まずは組織内の“思い込み”を見直すことが求められている。