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IPA、「暗号鍵管理ガイドライン」を改訂公開 〜 実運用に即した設計・管理の手引きとして刷新 〜

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、「暗号鍵管理ガイドライン」の最新版を公開した。暗号アルゴリズムが安全であっても、それを支える暗号鍵が適切に管理されなければ、暗号システム全体の安全性は保てない。こうした前提のもと、IPAは暗号鍵および暗号化データのライフサイクルを通じた安全な管理体制の構築を支援するため、本ガイドラインを策定している。

今回公開されたガイドラインは、「暗号鍵管理システム設計指針(基本編)」と「暗号鍵管理ガイダンス」の二部構成であり、実運用に即した設計・管理の実践的な手引きとなっている。

基本編:NIST SP800-130準拠の包括的指針

「暗号鍵管理システム設計指針(基本編)」は、あらゆる業種・業界を対象にした暗号鍵管理システムの設計・構築・運用・役割分担・責任範囲に関する基本的な指針を提供するものである。特に米国国立標準技術研究所(NIST)のSP800-130「A Framework for Designing Cryptographic Key Management Systems」をベースとしつつ、日本国内の運用実態に即した内容へと再構成されている。

本指針は、以下の構成で整理されている。

  • 第1章〜第2章:ガイドラインの目的と暗号鍵管理の基本的な考え方
  • 第3章:本指針の活用方法
  • 第4章〜第9章:NIST SP800-130に準じた設計・運用上の各目的に応じた詳細なガイド

また、Appendixでは本指針とNIST文書で用いられる専門用語の対応表も掲載されており、国際文書との照合が可能である。

設計指針にはチェックリストも用意されており、各章に記載されたフレームワーク要件を基に、システム設計書や運用マニュアルに必要な記載事項が網羅されているかを確認できる実務的な資料として機能している。

暗号鍵管理システム設計指針 (2020年7月7日 第1版公開)のダウンロードはこちら

ガイダンス編:トイモデルによる具体例付きの副読本

「暗号鍵管理ガイダンス」は、上記設計指針に記載される内容を実際の設計や運用で検討する際の補助資料としての位置づけであり、Part 1およびPart 2から構成されている。

Part 1では、暗号アルゴリズムの選定や運用対策、必要な鍵情報の管理に関する技術的な背景や考慮点を解説。トイモデル(簡易システム)を活用して、具体的なチェックリスト記載例を示している。

Part 2では、暗号鍵管理システムの設計原理、運用ポリシー、ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)などへの対策、および運用面での注意点を示しており、実際の導入現場における適用を強く意識した内容となっている。

資料のダウンロードはこちら
暗号鍵管理ガイダンス Part 1 (2025年4月25日 第1.1版公開)
暗号鍵管理ガイダンス Part 1 (全86ページ)(PDF:1.8 MB)

暗号鍵管理ガイダンス Part 2 (2025年4月25日 第1版公開)
暗号鍵管理ガイダンス Part 2 (全121ページ)(PDF:2.2 MB)

国際標準との整合性を確保しつつ、日本国内の運用に適した実用的資料

本ガイドラインは、NIST SP800-130に加え、SP800-57(鍵管理に関する推奨事項)などの国際文書にも対応。日本語訳も公開されており、海外文書との整合性と国内実務とのバランスがとれた構成となっている。

サイバーセキュリティの根幹を支える暗号鍵管理の高度化は、あらゆる分野において今後ますます重要性を増していく。IPAは、各種企業・団体において本ガイドラインを活用し、暗号鍵の安全な運用体制構築を進めてほしいとしている。

ガイドラインおよび関連資料は、IPAのWebサイトにて無料で公開されている。

出典:IPA 暗号鍵管理ガイドライン

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