1. HOME
  2. ブログ
  3. 仮想化基盤の新潮流「Prossione Virtualization」始動

仮想化基盤の新潮流「Prossione Virtualization」始動

2025年7月31日、NTTデータはKVMベースの仮想化基盤管理・運用サービス「Prossione Virtualization 1.0」の提供開始にあわせ、報道関係者向けの説明会を開催した。
仮想化製品市場で、システムの「主権確保」が重要性を増す今、同社が新たに打ち出したこのサービスは、オープンソースによる透明性と長期安定運用を軸に据えている。
本記事では、当日の講演に基づき、NTTデータおよび連携企業であるサイバートラストの説明内容を紹介する。

「システム主権」確保を支える基盤として

NTTデータ 執行役員 テクノロジーコンサルティング事業本部長の新谷哲也氏は、冒頭で「Prossione Virtualization 1.0」の正式提供開始を発表し、その背景と提供に至る経緯について説明した。

まず新谷氏は、2023年の外資系仮想化ベンダーの事業売却を契機に、仮想化基盤の再選定を余儀なくされた企業が増加している点に言及した。とくに仮想化基盤を活用している顧客の中には、今後の製品のコストや継続利用に対する不安が広がっており、そのような状況への対応策として、NTTデータは2025年3月に「Prossione Virtualization」構想を発表した経緯を紹介した。

その後、社内外から大きな反響があり、需要の高まりを受けて今回の正式サービス開始に至ったと述べた。

新谷氏は、「データや運用の主権を自国・自社で確保すること」が今後のITシステムにおける重要課題であると強調した。AI利用の拡大や国際情勢の変化を背景に、単なる仮想化だけでなく、データ主権や運用主権を確保できる基盤が求められていると説明。NTTデータはこれまでにもクラウドサービス「OpenCanvas」などを通じて主権確保に取り組んできたが、今回のサービスはオンプレミス環境における主権確保に応えるものであると位置づけた。

「Prossione Virtualization」は、KVM(Kernel-based Virtual Machine)を基盤に採用しており、NTTデータ社内における長年の運用実績があることも紹介された。統合開発クラウドなどの社内開発環境では数万VM規模でKVMを利用しており、安定運用を継続している。また、開発中の統合バンキングクラウドなど金融向けのシステムでもKVMベースのサービス展開を計画しているという。

新谷氏は「KVMを提供するというより、NTTデータ自身が使い続けなければならない立場にある」とし、自社で長期的に使い込むことを前提としたサービスである点を強調した。さらに、NTTグループ全体でもOSS(オープンソースソフトウェア)の開発体制を築いており、LinuxやJavaといった領域で高い技術力を持つ人材が多数在籍している。これまで社内で活用してきたノウハウや人材を、社外にも提供していくという意志を表明した。

サービス構成としては、KVMをGUIベースで管理可能な「Prossione Virtualization Manager」を中心に、トレーニング、ナレッジドキュメント、技術サポートなどをパッケージにしたサブスクリプション形式で提供される。KVMの導入・運用における専門知識のハードルを下げ、より多くの顧客に活用してもらうことを狙いとしている。

さらに今後は、サイバートラスト社との連携により、「Prossione Virtualizationサブスクリプション with AlmaLinux」も提供予定であることが紹介された。これは、AlmaLinux OSと仮想化基盤の両方を組み合わせて提供するものであり、利便性の高いサービスとして2025年秋に開始予定である。

新谷氏は今後の展望として、「NTTデータが継続して自ら使い続けることでサービスの安定性と品質を高め、パートナー企業とも連携しながらエコシステムを拡大していく」と語った。最後に、「国内における仮想化基盤の市場でも、最低でも20%のシェアを獲得していきたい」という意欲を示し、講演を締めくくった。

1.0の中核機能と導入障壁の克服

NTTデータ ソリューション事業本部 OSSソリューション統括部長の濱野賢一朗氏は、「Prossione Virtualization 1.0」に実装された機能や活用のユースケース、そして今後のロードマップについて説明を行った。

まず濱野氏は、仮想化技術の成り立ちとして、コンピュータの性能向上に伴い、1台のサーバーで複数の仮想マシンを稼働させる「サーバー仮想化」の必要性が生まれたことを説明した。物理サーバー上に仮想化ソフトウェアを配置し、その上に仮想マシンを稼働させる構成が一般化し、複数台のホストと多数の仮想マシンからなる「仮想化基盤」が形成されているという。

その中で、Prossione Virtualizationが採用するKVM(Kernel-based Virtual Machine)は、Linuxカーネルに組み込まれたモジュールであり、さまざまな大規模クラウドで実際に使われていることを紹介。公開されている情報は少ないが、実際には多くの仮想マシンがKVM上で稼働していると述べた。

一方で、KVMの導入・運用には高度なスキルが求められるという課題もある。ストレージやネットワークとの連携、設計・構築・運用に必要な設定作業、コマンド操作など、複雑な構成要素が多いため、社内での運用に不安を抱える企業も多い。そこで、そうした導入障壁を解消することを目的に提供されるのが「Prossione Virtualization」であると説明した。

製品構成の中核をなすのが「Prossione Virtualization Manager」である。これは、複数のホストや仮想マシンを一元的にGUIで管理できるソフトウェアであり、誰でも直感的に仮想化基盤の構成と状態を把握できるようになる。講演内では実際の画面イメージも紹介され、仮想マシンのリソース使用状況や動作ホスト、状態確認、コンソール操作といった機能を一括で提供できることが示された。

もう一つの重要な機能として紹介されたのが「ライブマイグレーション」である。これは、仮想マシンを停止することなく、稼働中の別ホストへ移行できる機能である。ホストのメンテナンスや障害対応、高負荷分散などの目的で、仮想マシンを柔軟に移動させる運用が可能になる。濱野氏は、実際の移行手順を画面とともに示しながら、その流れを具体的に説明した。

Prossione Virtualization 1.0は、こうした基本機能を備えた初版であり、「共通的に絶対必要な機能をまず凝縮して実装した」と強調した。今後は、顧客からの要望を取り入れつつ、2026年春にリリース予定の2.0で、ホスト障害時の自動復旧機能(高可用性、HA)や既存仮想基盤からの移行支援、ネットワーク・ストレージ管理などの機能拡張を図る予定である。

サービス形態はサブスクリプション型で提供され、Red Hat Enterprise Linux上で動作する構成を基本としながら、秋以降はAlmaLinuxを含む構成「with AlmaLinux」も提供予定である。これにより、Red Hat製品を別途調達せずに利用できるパッケージとなり、より柔軟な導入が可能になるとした。

最後に濱野氏は、「KVMを使いたいが使いこなせない」というユーザーに対して、導入障壁を取り除きながらシステム主権の確保と長期安定運用を実現するのがProssione Virtualizationの目的であると述べ、説明を締めくくった。

OSSサポートで構築する信頼の基盤

説明会の最後には、Prossione VirtualizationにおけるOSS連携パートナーであるサイバートラスト株式会社 代表取締役社長の北村裕司氏が登壇し、AlmaLinuxのサポートと連携について紹介した。

北村氏は、OSS(オープンソースソフトウェア)の利点として、「中身が見えることによる透明性と、特定ベンダーに依存しない運用の自由度」を挙げた。その上で、今回のサービス連携は「商用製品に依存せずとも、自立した基盤を構築できる」というOSSの価値を体現したものであると語った。

サイバートラストは、国内におけるAlmaLinux OSの展開・技術サポートを手掛けており、公共・製造・金融などの分野でも実績を持つ。そうした実績を踏まえ、今回、NTTデータが提供する「Prossione Virtualizationサブスクリプション」に、AlmaLinux OSのサポートを組み合わせた新メニュー「with AlmaLinux」の技術支援を担うこととなった。

構成としては、KVMが稼働する各ホストサーバー上にAlmaLinuxをインストールし、仮想マシン基盤を構築する形となる。これにより、仮想化ソフトウェアからOS層に至るまでを一貫してサポートできる体制が整い、導入および運用の負担軽減につながると説明された。

また、商用ディストリビューションと異なり、OSSとしてのライフサイクルに沿った継続的なアップデートが可能であることから、長期的な安定運用にも適しているとした。

北村氏は、「OSSの世界では、セキュリティアップデートや長期サポート(LTS)への即応体制が重要である」と述べ、今回の連携によってそれを提供可能であると説明。今後も、信頼性と運用性を両立できる選択肢を市場に提供していく考えを示した。

関連記事

人気コーナー「サイバーセキュリティー四方山話」が電子書籍で登場!!