サプライチェーンリスクと規制強化の現実と動向
情報セキュリティメーカーであるデジタルアーツ株式会社が公開した発表リリースに基づき、サプライチェーン起因のインシデント動向と実効性ある対策の方向性を整理した。国内インシデントの集計データに基づき、外部委託先や取引先に起因する事案の拡大傾向、各分野で進む規制強化の流れを示すセキュリティレポートを公開した。
サプライチェーン起因インシデントの顕在化
2019年以後の半期ごとの国内インシデント公表組織数から、サプライチェーンを起因とする事案のみを抽出し、委託元と委託先の公表数を比較したところ、両者に大きな乖離が生じていることが示された。特に2023年以降は乖離幅が急拡大し、2025年上半期には単一の委託先(またはサービス事業者)を起点とした大規模インシデントが連鎖し、委託元281社が影響を公表したケースが確認されている。
委託先管理の複雑性
外部委託やクラウド活用が進む中、委託先ごとに対策レベルや統制方法が異なるため、サプライチェーン全体で対策基準を統一しにくいという実務課題がある。効果的な管理としては、十分なリスク分析、リスクの大きさに応じた重点的チェック、事故発生時の影響を想定した事前の対応策準備が重要であると整理されている。
委託元側にのしかかる対応コスト
サプライチェーンリスクが顕在化すると、委託元は法的責任や社会的信頼の毀損を回避するため、個人情報保護委員会への報告、本人通知、プレスリリースやWeb公表、関係省庁への連絡、再発防止策の策定など、迅速かつ適切な初動対応が求められる。分野によっては所轄官庁への報告義務が定められる場合もあり、委託先起因であっても委託元側で多岐にわたる対応コストが発生し得る点に留意が必要である。
保険・自治体・教育分野で進む見直し
リリースは、保険、自治体、教育などの分野で規制強化や運用見直しが進む状況を指摘している。組織ごとの事情は異なるが、サプライチェーン起因インシデントの増加に伴い、委託先選定や契約時の個人情報保護対策、影響公表の在り方などが継続的に見直されつつあることが示されている。
「自社対策だけでは不十分」の時代へ
単一の事案が広範な委託元へ波及する現実を踏まえると、自社単体の対策だけでは十分ではない。委託先・取引先を包含するサプライチェーン全体のセキュリティ管理を前提に、情報管理体制を強化する必要がある。リリースは、情報そのものに権限設定を与えて制御するIRM的手法、およびIDaaSによる統合的ID管理・認証基盤の活用を、リスク低減に向けた具体的な取り組みの方向性として挙げている。
関連ソリューション
FinalCode(ファイル暗号化)
重要ファイルを暗号化し、委託先に渡った後も閲覧・編集・印刷の可否を制御できる。アクセスログにより「誰がいつどのファイルを開いたか」を可視化し、不正アクセスを検知し・アラート通知にも対応する。万一の流出時は閲覧権限の制御により閲覧させないことを担保し、プロジェクト終了時には遠隔削除に対応して情報の残置リスクを抑制する。委託先を含めた均一なセキュリティ水準の維持を支援する点が特長である。
StartIn(IDaaS/シングルサインオン・ID管理)
ID管理やシングルサインオン、多要素認証に加え、位置情報認証(GPS)、第三者認証(上長など)、定期認証といった独自要素により、強度の高い認証と安心・安全なID管理を実現する。
関連イベント(告知)
StartInは「JAPAN Security Summit 2025」でも紹介予定である。詳細は公式サイトを参照いただきたい。
https://jss2025.japansecuritysummit.org/