AI(人工知能)を悪用した音声詐欺が世界で増加中
成人の10人に1人が被害に遭遇“音声クローンが3秒で作成できる今”、日本の被害遭遇率は低いものの、今後への注意が必要
マカフィー株式会社は、日本を含む世界7ヵ国(日本、米国、英国、ドイツ、フランス、インド、オーストラリア)を対象に実施したAI(人工知能)を悪用したオンライン音声詐欺の現状に関するレポート「The Artificial Imposter」を発表した。
マカフィーが7ヵ国の18歳以上の成人7,054人を対象に調査を行ったところ、10%が自身がAI音声詐欺に遭遇、15%が知人が遭遇したと回答した。なお、被害者の77%が実際に金銭被害にあったと回答している。日本のオンライン音声詐欺の遭遇率は、世界7ヵ国で最も低く、自身が遭遇は3%、知人が遭遇は5%にとどまり、世界平均の約3分の1。
AIを悪用した音声クローニングの詐欺
人の声(声紋)は、生体認証として個人を特定できるユニークさを有し、声を通じて信頼関係が確立されていることも多くある。しかし、調査対象の世界の成人の過半数が週に1回以上(ソーシャルメディアやボイスメモなどを通じて)、さらに全体の10%は週に5回以上、自身の音声データをオンラインで共有しており、この声がコピー・悪用され、サイバー犯罪者の格好の材料になっている。日本の音声データのオンライン共有は、オンライン音声詐欺の遭遇率同様、世界7ヵ国で最も低く、週1回以上の共有が28%、週に5回以上は5%で、世界平均の半分ほど。
AIツールの普及により、画像や動画、そして、友人や家族の声を悪用することがこれまで以上に容易になった。マカフィーの調査によると、詐欺師はAI技術を使って声のクローンを作り、困窮を偽ったボイスメールを送ったり、被害者の連絡先に電話をかけていることが明らかに。また、回答者の70%(「識別できるかどうかわからない(35%)」と「識別できないと思う(35%)」の計)がクローン音声と本物の識別に自信がないと回答しており、音声クローニングによる詐欺が勢いを増す要因にもなっている。
マカフィー株式会社 日本・アジア地域チャネルマーケティング本部長の青木 大知 氏は「AIは私たちのビジネスで素晴らしい機会をもたらしたり、生活を便利にしたりしますが、悪用されるリスクもはらんでいます。日本は他国に比べ、音声データのオンライン共有率が低く、結果的にAIを悪用した音声詐欺の遭遇率も低い傾向にありますが、この現状はむしろ、今後、音声詐欺に遭遇する可能性が高いとも受け取ることができます。McAfee Labsの調査で、AIボイスクローニングツールを利用して、わずか3秒で85%*1の一致率を有する音声クローンを作成できることが分かりました。このようなAIを悪用した音声クローニング詐欺が横行しやすい現状を認識し、自分のアイデンティティの共有に慎重になるとともに、音声詐欺の遭遇に備えた準備が必要です」と述べている。
AIを悪用した音声クローニングの詐欺から身を守る方法
- 口頭での「パスワード(合言葉)」の確認:家族や信頼できる親しい友人との間でのみ通用する「パスワード(合言葉)」の共有。特に、高齢者や、家族、友人が電話や電子メールで助けを求めてくる際は相手に「パスワード(合言葉)」を求めることを習慣づけるようにする。
- 発信者への疑念:知らない発信者からの電話やテキスト、電子メールだけでなく、見覚えのある番号からの発信でも、送金など詐欺に類する行為を求めてくる場合は、一呼吸置き、電話を切る、相手に直接電話をかけ直すか、情報を確認してから応答するなど心掛ける。
- クリックやシェアは慎重に:ソーシャルメディアネットワークに参加している場合、自分のアイデンティティを共有するほど、ご自身のアイデンティティが悪意のある目的でクローン化される危険性が高まる。
- 個人情報保護サービスの管理:ソーシャルメディアネットワーク等で個人を特定できる情報にアクセスできない設定を行ったり、個人情報がダークウェブに流出した場合に通知を受ける設定を行うことができる。サイバー犯罪者が自分のクローンを作成できないように個人情報の管理に務める。
国別の調査結果を含む全調査データ(英語)へのアクセスは、下記リンクより。
調査手法について
本調査は、市場調査会社MSIリサーチが2023年4月13日から4月19日まで、世界7ヵ国の18歳以上の成人7,054人を対象にオンラインアンケートで実施したもの。 国ごとの回答者数は次の通り:米国(1,009 人)、 英国(1,009人)、ドイツ(1,007人)、フランス(1007人)、 インド(1,010人)、日本(1,004人)、オーストラリア(1,008人)。