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量子暗号の理解が進む講座
 ~量子暗号が求められたときに慌てないために~

“量子”という言葉がWebサイトでも多く見られるようになり、書籍も多く出版されるようになってきました。
量子コンピューターは並列処理により、容量の拡大、処理時間の大幅短縮などが実現されると言われています。量子暗号を活用すれば絶対に破られないと言われています。
非常に期待が高い量子ですが、量子コンピューターって説明が出来ますか?量子暗号は何故破れらないのでしょう?その前に、そもそも量子って何・・・?

量子は、0と1のデジタルと違い、量子ビットが重ね合わせの状態やもつれなどを用いて処理を行うので今のコンピューターでは実現不可と考えられていることを可能にするのです。
これが理解できている方、人に説明できる方は、当講座は不要ですかね。

技術開発は進歩し、量子コンピューターの実現が見えつつあり、2030年には耐量子コンピュータ暗号が国際標準になるのではないかと言われています。もう「暗号」にかかわる「量子」が避けては通れない技術なのです。そこで、技術者の皆さんだけでなく、ITに関わる全ての人に量子暗号を理解してほしい。そう考えてこの講座は開設されることになりました。

本を買ってもわからない。有料講座を受けてもどうも理解が進みにくい。そういった方々にもおすすめです。

※この講座は、映像でのコンテンツが中心になります。講師は中央大学研究開発機構 専任研究員 機構教授 山澤昌夫氏と中央大学研究開発機構 客員研究員 松本義和氏が務めます。
山澤氏と松本氏は師弟関係。お二人の掛け合いも見どころです。

この講座の開校にあたって講師の山澤氏からの寄稿をいただいたので紹介します。

「量子暗号を学ぶにあたって」

中央大学研究開発機構 専任研究員 機構教授
一般社団法人セキュアIoTプラットフォーム協議会 標準化部会 座長
モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)特別参与
山澤昌夫

普通、人々は常識の世界に生きています。しかし、この特集でご紹介するのは、「量子理論」のセキュリティ分野での産業応用の話です。その基本となっている世界観は常識の世界と異なります。でも、心配しないでください。その「常識と違った世界観」から導かれる結果で、いま暮らしている世界が動いているのですから。
導かれる道筋をざっくりご理解いただければ、あ、結果はそんなに常識とちがわないじゃないかと、きっと安心すると思います。ご理解いただいたあとは、世界の見え方が少し深まり、より楽しく暮らせるものと思います。
お話は、世界観の変遷と、いくつかの常識的結論の裏側からはじまります。つぎに、セキュリティ分野で話題になっている「量子暗号」の世間的状況を見てみます。

1.「量子」はどこから来た?それでなにが変わった?

話は、19世紀の後半に遡ります。歴史にご興味のかたはよくご存じのように、産業革命後、コークスを使った製鉄業、鉄精錬工業がドイツで発展していました。いまでは、よく知られていますが、物体から出てくる光の波長分布(平たく言うと、色あいですな、炭の温度が低いと赤っぽいけど、火吹き竹で吹くと橙色から白っぽく光る。コロナで体温測ってますな?皮膚からでる赤外線の波長分布を計っているのです)を計ると、物体の温度がわかります。
温度が高くなると、放射強度全体が大きくなります。そうだよね、温度が上がるってことは熱を注ぎ込んでいるってことで、エネルギーが大きくなるということ。そうなると出る方(輻射されるエネルギー)も増える。常識的にはそうでしょ?
でも、よく考えると、ちょっと変なのです。暖めるってことは、輻射エネルギーをたくさん注ぎ込むってこと。注ぎ込んだエネルギーは、再輻射されて、出て行く。その出方が変なのです。
理想的には、箱の中の光のエネルギーを増やすことになる。増やしたエネルギーは、熱力学的には、っていうか、常識的には、箱の中の光エネルギー準位に均等に配分される、というのが通り相場だった。しかし、それだと、波長が短い方(エネルギー準位の高い方)にどんどんエネルギーが配分されて、エネルギーを注ぎ込むほど、短い波長の光が出る、はず。
そこまでは、よいのだが、そう仮定して予想計算した再輻射波長と、実測と合わない。合わない原因が、エネルギー配分の「見当違い」(検討違い)だっていうのは、素人さんはともかく、物理学の分かっている人ならすぐに気がつく(らしい)。もちろん、わたしはとても、素では解明できませんでした。

さあ、困った。レイリーとかジーンズとか名だたる学者が電気磁気学、統計学、古典力学を駆使して数式を出そうとしたが、実測と合わない。そこに、プランク(Max Plank: 1858-1947)が新しい仮定を導入した。「エネルギー準位の大きさは任意の値でなく、周波数(振動数)の整数倍しかとらない(比例乗数はhである: h= 6.62607015×10−34 J s)とすると、ぴったり合致したのである。

 プランク定数であるが、エネルギー・秒、すなわち、力・長さ・秒のディメンジョンを持つ。以前、力はキログラム原器があってそれを基準にこの常数も決まっていたが、2019年にプランク常数を一定値として定義し、力もそれを基準にすることにした。 したがって、 h= 6.62607015×10−34 J sの小数部はこれが正確な値である。 ちなみに、時間は1967年の国際度量衝総会で「秒はセシウム133原子の基底状態にある2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の9192631770周期の継続時間」と定義した。長さは1983年の総会で「1mは、1秒の299 792 458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ」と定義されている。  

エネルギーが飛び飛びの値しかとらない、と言うことになるのだが、プランク自身は当初、エネルギー分布計算の発散を抑える便法として導入した考えだったので、自分自身も扱いに困ったと言われている。(古典電気磁気学を学んだ小生としては、気持ちはよく分かる。)
しかし、1905年にアインシュタインが「光の発生と変換に関する1つの発見的な見地について」を発表し、光は量子だ、と主張した。プランクの仮定を支持したのである。(1921年のノーベル賞)

「量子」の考えは、マックス・プランクが発案し、アインシュタインが確定させた。それで、なにが変わったか?そう、困ったことに、電磁波が「波」ではなく、「粒子」として振る舞う、こともある、と言うことになったのだ。さらに、ド・ブロイが「その逆もあり」か、と言って、電子が「波」のように振る舞うことがある、と言う実験結果をだしてしまった。

 「光の発生と変換に関する1つの発見的な見地について」:光が金属に当たると電子が出る。光電効果として知られる現象である。入射光と出てくる電子のエネルギー関係について、アインシュタインが考え方を提案したもの。光が強いとたくさん電子がでそうだけれど、実際は、ある波長以上の光でないと、いくら強い光をあびせても電子は出ない。ある波長以上になると、電子が出始めるが、光強度を大きくすると、電子の数は増すが、出てくる電子一個の持つエネルギーは、光強度に関係なく、光の波長に依存した一定値である。それをアインシュタインが説明した。 

20世紀は、こうして始まったのである。そして、はじまったとたんに、1905年には特殊相対論、1915~1916年の一般相対論が出て、19世紀末の量子論とあいまって、物理学の基盤をガラガラと崩すことになった。

2.「量子」の世界観

物理学の基盤の作り直しは、ハイゼンベルク、マックス・ボルンとパスクアル・ヨルダン、ポール・ディラックによる行列力学、シュレーディンガーの微分方程式による波動力学に始まる。それらを等価として、ジョン・フォン・ノイマンは、量子力学の数学的に厳密な形式化(基礎)を確立した(『量子力学の数学的基礎』(1932) 他)。ディラックは1939年にブラ-ケット記法を導入した。ディラックに因みブラ-ケット記法はディラック記法(英: Dirac notation)とも呼ばれている。ブラ-ケット記法とは、ヒルベルト空間のようなある空間上の状態ベクトルをケット(英: ket)、その双対空間上のベクトルをブラ(英: bra)で表す記法のことで、ブラとケットの自然な積として波動関数の内積などを簡潔かつ視覚的に示す目的で利用される。
量子力学の定式化が行われるようになって、現代物理学では量子力学とアインシュタインの相対性理論が最も一般的な物理学の基礎理論であると考えられるようになった。その後、電磁相互作用、重力相互作用を量子力学に組み込むことが求められるようになった。それぞれ、特殊相対性理論や一般相対性理論と量子力学の橋渡しをしてひとつの定式化された理論を目指すことに相当する。
量子力学の成立によって物性物理学の発展に基づいた現代の工学の発展は可能になった。今日のIT社会ないし情報化社会と呼ばれる状況を成立させている電子工学も、半導体技術などが量子力学をその基盤としている。量子力学はまた化学反応の現代的な記述を可能にし、量子化学の分野が発展した。20世紀の人類の発展は、19世紀末の量子力学の萌芽に端を発した、と言っても過言ではないだろう。
しかし、しかし、しかし、周囲の人々はだれも「量子的なこと」がなにか語ることはないし、語る必要も無い。スマホでゲームをするあなた、そうあなたです、スマホは「量子力学が基本」でできているのですよ!
それもこれも、量子力学そのものが、我々の日常「常識」とかけ離れた概念を強要するからである。「量子力学は、実に理解しきれない分野です。ノーベル物理学賞受賞者で量子電磁力学の創始者の一人としても名高いリチャード・P・ファインマン[注1]も『量子力学を理解しているという人がいたら、その人は嘘つきだ』というコメントを残しているほどだから。」と言う気休め言葉が西森秀稔(量子アニーリング理論の提唱者)のいつもの前置きである。

量子の話、お呼びでない!とは言わないでほしい。すでに25年前になるが、1994 年,AT&T Bell 研究所の Shor(現 MIT)は,因数分解問題や離散対数問題を効率的に解く量子コンピューター用アルゴリズムを提案した。その2年後の1996年、Groverは全数探索の高速化ができる量子コンピューター用アルゴリズムを提案した。それらによって、インターネット(というか電気通信業界)が震撼し(震え上がってしまい)現代暗号の見直しと言う大事業が始まったのである。量子理論を暗号通信に応用しよう、と言う試みはもっと早かった。1984年、Bennett(チャールズ・ベネット)とBrassard(ジャイルス・ブラザード)がセッション鍵の「量子鍵配送方式」を、2000年にYuenが通信信号を量子効果で隠す「量子通信方式」を相次いで提唱した。世界はもう後戻りできないところに来ているのである。
サイバーセキュリティはプロトコルとプログラミングの上に成り立っている。量子力学はそうではない。物理法則の上に成り立っている。だが、プロトコルとプログラムが機能するのはコンピューターと通信網の上である。コンピューターと通信網は・・・そう、量子力学が基本の「デバイス上」で動いている。だからって言う訳じゃありませんが、量子力学がどんなものか、ちょっとは、知ってもいいじゃないか。
サイバーセキュリティといえば、暗号学を抜きには語れない。この話では「暗号」にかかわる「量子」話をとりあげたいと考えて講座を開設することにしました。
                                         以上

では、あとは動画でお楽しみください。

第1部 まずは、暗号について再確認しておこう:講師松本氏
 第1章 なぜ暗号が必要になったか。
 第2章 暗号の種類について
 
今後の予定
第1部 まずは、暗号について再確認しておこう:講師松本氏
 第3章 暗号の仕組みについて
 第4章 暗号の未来
第2部 量子って何だっけ? 復習しておこう:講師山澤氏
第3部 量子暗号講座(上級編):講師山澤氏

今後の予定は変更(たぶん増えます)になることもございます。

講師紹介
山澤昌夫氏
中央大学研究開発機構 専任研究員 機構教授
一般社団法人セキュアIoTプラットフォーム協議会 標準化部会 座長
モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)特別参与

松本義和氏
中央大学研究開発機構 客員研究員
一般社団法人 セキュアIoTプラットフォーム協議会 標準化部会 副座長
サイバートラスト株式会社 セキュリティプロモーション統括部 統括部長

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