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サイバートラストがCentOS 7のサポート方針と、ポストCentOSとしてのMIRACLE LINUX 8.4無償提供と9.0の開発を明らかに!

サイバートラストは12月16日、同社が提供するMIRACLE LINUXの無償公開と今後の開発計画を発表し、さらにメンテナンス更新が2024年6月30日で終了する「CentOS 7」に対するサポート方針についても説明した。

MIRACLE LINUXの22年の歩みとディストリビュータとしての自負と矜持

まずサイバートラストの伊東達雄氏が、MIRACLE LINUXの歩みについて解説した。

サイバートラスト OSS・IoT事業部 上席執行役員副事業部長 伊東達雄氏

MIRACLE LINUXは、2000年から継続して提供されている国産Linuxディストリビューションだ。2000年当時は、LinuxといってもTurbolinuxやVine Linuxといった多くのディストリビュータが乱立していたが、現在まで企業向けに継続して提供しているのはサイバートラストのMIRACLE LINUXのみだろう。国内で日本語の技術サポートや、18年を超える長期サポートを行っており、安心して利用できるLinuxということで定評を得ている。

ミラクル・リナックス社は、2017年に旧サイバートラストと合併し、新生サイバートラストとして再スタートを切り、今年マザーズに上場している。2000年の創業時はLinux OSSエンジニアは5名ほどしかいなかったそうだが、2021年現在、サイバートラストのグループ企業を含めて約100名超という大所帯になり、OSSを活用した幅広い製品を中立的な立場で提供している。

ミラクル・リナックス社とサイバートラスト社の歩み。組込みLinux OSとサイバートラストの国内最大級の電子認証インフラが融合。

これまでのMIRACLE LINUXの実績としては、高い技術力とサポート力が要求される領域、主に社会インフラ、通信・交換機、交通・流通、ファクトリーオートメーションなど、止まってはいけないミッションクリティカルに近い分野で多く採用されている。

たとえば1つの事例として、ソフトバンクがMIRACLE LINUXへ乗り換えを実施。同社は1万台超えの仮想サーバーと、年間1000台以上増える新規仮想サーバーにCentOS を採用していたが、CentOS Linux 8の開発が2021年末に終了するのに伴い、代替OSとしてMIRACLE LINUX 8.4を採用した(https://www.cybertrust.co.jp/case/miraclelinux-sb.html)。 次に同氏は、現在に至るまでのMIRACLE LINUXの歩みについて概観した。

MIRACLE LINUXの歩み。MIRACLE LINUX1.0が登場して20年目の2020年には、産業用PCのLinuxシェアでNo.1を獲得した。

当初、ミラクル・リナックス社はOracleの子会社であったため、サイバートラストはOralce DBの親和性を念頭におき、MIRACLE LINUXを提供していた。2001年のバージョン2.0からRed Hat Linuxベースになり(1.0はTurboLinuxベース)、2004年に長期サポートを開始。市場ニーズに合わせて2011年のMIRACLE LINUX 6.0からはRed Hat Linux(RHEL)互換となった。2020年には産業用PCのLinuxシェアで同社のMIRACLE LINUXがNo.1を獲得し、今年から8.4の無償提供がスタートしている。

伊東氏は「将来的にCentOSがなくなることを考慮して(CentOS 9は開発されないとアナウンスされている)、我々はポストCentOSとしてMIRACLE LINUX 8.4の無償提供を始めました。22年目を迎える国産Linuxディストリビュータとして、これらも安心して使えるMIRACLE LINUXを提供し続けていきます」と強調した。

MIRACLE LINUX 9/CentOS延長サポートの全体戦略と3つの新施策とは?

続いて、同社の鈴木庸陛氏が、MIRACLE LINUX 9とCentOS延長サポートの全体戦略について説明した。

サイバートラスト 執行役員 OSS・IoT事業部 OSSビジネス本部長 鈴木庸陛氏

サイバートラストでは、CentOSを2005年から提供していたが、運用費の安さを背景に2010年代半ばからニーズが高まっていった。当時CentOS 5のサポート終了に伴って、同社の延長サポートも増えた。しかしCentOS 8になってEOL(サポート終了)が急遽2021年末に変更になることが発表された。そのためサイバートラストでは救済措置として延長サポートを始めるという。

鈴木氏は「その一方で我々は、産業用としてMIRACLE LINUXを長年提供し続けてきました。今後はポストCentOSとして、国内外のユーザー全般の受け皿になることを使命にしていきます。MIRACLE LINUXを純粋なRHELクローンとしてライセンス無償化で提供することをお約束します」と強調した。

MIRACLE LINUX 8の無償公開は10月から始まり、すでにISOイメージのダウンロードが累計約2万になったという。現在、クラウド環境ではMS Azureなど各マーケットプレイスで公開中だ。データセンター各社の基盤と連携し、MIRACLE LINUXの新メニューもリリース。またPowerToolsやHAリポジトリなどユーザーの要望に応えて公開している。

さらに鈴木氏は、MIRACLE LINUXに関する3つの新しい取り組みを紹介した。

1つ目は、MIRACLE LINUXユーザーやパートナーとのコミュニケーションの窓口として「MLフォーラム」と「検証済 環境」の専用サイトを用意したことだ。

より良いMIRACLE LINUXユーザーの利用環境の拡大に向け、「MLフォーラム」と「検証済み 環境」という2つのコミュニケーション窓口(専用サイト)を新設。

「企業ユーザーの皆様が安心してMIRACLE LINUXを使って頂くために、情報を共有できる環境としてMLフォーラムを用意しました。あわせて今後の予定も随時公開していきます。検証済 環境のサイトでは、サーバーやソフトウェア、仮想基盤などの検証済環境を一覧で掲載したり、パートナー向けの動作検証プログラムも開始しています」と鈴木氏。

2つ目は、MIRACLE LINUX 9への取り組みだ。 MIRACLE LINUX 9もライセンス無償として公開され、そのレポジトリー群はユーザーの要望に応じて追加されていく。その他のメニューは現行の MIRACLE LINUX 8と同様のものになるという。標準サポート、アプランスまたはLinux専用機向け、大規模向けのサポートを有償提供する予定だ。

MIRACLR LINUX 9もライセンス無償でリリース。MIRACLR LINUX 8同様に、ライセンス無償、10年アップデート、オプション有償サポートとする。

3つ目は「CentOS延長サポート for CentOS 7」のリリースだ。サイバートラストでは、ポストCentOSの判断期間としてCentOS7を2027年まで延長することで、MIRACLE LINUXを含めて適切なディストリビュータをユーザーに吟味をしてもらいたいという。

「CentOS延長サポート for CentOS 7」のリリース。2027年まで利用可能。CentOS LinuxのEoL後、約2年間のアップデート提供を行う(技術保守込み)。

MIRACLE LINUXのリリース方針と、今後のロードマップ

最後に同社の吉田 淳氏がMIRACLE LINUXのリリース方針と今後のロードマップについて紹介した。

サイバートラスト 執行役員 OSS・IoT事業部 OSS技術本部長 吉田淳氏

Red Hat社のリリースにも関係することだが、MIRACLE LINUX 8.4に続くバージョン8.6は2022年9月にRC版を、また新版となるMIRACLE LINUX 9は2022年10月にRC版を提供する予定だ。それぞれβ版もRC版に先行してリリースされる。

MIRACLR LINUX 8.6およびMIRACLE LINUX 9のロードマップ。このスケジュールに沿って開発を進めて行く予定だ。

なおリリース日については変更されるケースもあるので、詳細については同社のサイト(https://www.miraclelinux.com/mlforum/road-map)において告知するという。

またアップデートパッケージについては、セキュリティフィックスがRed Hat社の修正パッケージ提供後の1週間以内、バグフィックスと機能拡張は同2週間以内をめどに提供していくそうだ。

ただし重大なセキュリティリスクやexploitコードの存在を確認した場合には、同社の判断によりRed Hat社からのパッケージリリースに先んじて緊急対応パッケージをリリースする場合もあるという。

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