AI活用の障壁と現場との認識差
AIを搭載した全社データ活用プラットフォーム「Domo」を提供するドーモ株式会社は、従業員数300名以上の中堅・大手企業でAIを導入している企業の従業員900名(経営者・役員・経営企画=200名、情報システム・IT・DX部門=200名、一般社員=500名)を対象に、「日本企業のAIとデータ活用の実態調査」を実施した。調査は、AI活用の実態と各層の認識ギャップ、導入・活用を阻む障壁を明らかにすることを目的としている。
調査の射程と方法
対象はAIを導入している企業に勤める従業員である。回答者は意思決定層(経営者・役員・経営企画)、情報部門(情報システム・IT・DX)、一般社員の3層で構成され、合計900名が回答した。設問は、会社および個人のAI活用レベル、目的・成果、戦略やビジョンの共有状況、推進の障壁、データ活用の浸透、データ取り扱い課題などで構成される。
会社におけるAI活用レベル(Q1)
「非常に高い / ある程度のレベルで活用できている」の合計は、意思決定層が75.0%に対し、一般社員は48.0%と27.0ポイントの差が確認された。一般社員では「十分に活用できていない/全く活用できていない」の合計が42.6%に上り、会社レベルの自己評価において、階層間の認識の差が明確に表れている。

自身のAI活用レベル(Q2)
個人の活用度については、意思決定層71.5%が「非常に高い / ある程度活用できている」と回答したのに対し、一般社員は30.2%にとどまり、41.3ポイントの差になった。会社レベルと同様、個人レベルでも活用度の自己認識に大きなギャップがある。

AI活用の目的(Q3)
「日常業務の自動化や効率化」が70.7%で最上位となった。一方、「売上向上や顧客体験の最適化」は29.4%、「マーケティング施策の改善」は24.9%である。層別にみると、意思決定層は「売上向上や顧客体験の最適化」が51.0%、「マーケティング施策の改善」が44.5%と他層より高い期待を示した。一般社員では20.4%(売上・顧客体験)と15.8%(マーケティング)で、それぞれ30.6ポイント、28.7ポイントの差が生じている。目的意識の面でも層間の違いが顕在化している。

AI活用の成果(Q4)
「業務効率化」が58.7%、「従業員の生産性向上」が41.3%となり上位に並んだ。一方、「売上拡大」の20.1%、「新規ビジネスの創出」の23.4%は相対的に低く、事業成長への寄与は道半ばという結果である。層別では、「新規ビジネスの創出」は意思決定層が36.0%に対し一般社員15.8%はで20.2ポイント差、「売上拡大」は意思決定層が33.0%に対し一般社員は12.0%で21.0ポイント差で、成果の受け止めにも差がある。

戦略・ビジョンの共有状況(Q5)
「明確なゴールとロードマップがあり、全社で共有されている」は15.0%にとどまる。層別では、意思決定層が24.5%、情報部門が22.5%に対し、一般社員は8.2%で、現場への浸透不足が示唆される。
戦略・ビジョンが不確定、あるいは共有不足とする回答の合計は66.4%である。

推進を阻む障壁(Q6)
最上位の障壁は「従業員のリテラシー・知識不足」の46.1%である。これに「AI活用の戦略やビジョンの不明瞭さ」が32.3%、「推進人材やノウハウの不足」が28.7%、「セキュリティ面の不安」が28.6%と続く。人材・知識の不足、戦略の不明確さ、セキュリティ不安が並存する構図が明確になった。

データ活用の浸透状況(Q7)
「一部の部署で活用されている」の42.8%が最多で、「全社的に浸透」は23.9%と限定的である。層別では、意思決定層の38.5%が「全社的に浸透」と回答し、情報部門の29.5%、一般社員の15.8%との間にそれぞれ9.0ポイント / 22.7ポイントの差がある。一般社員では「分からない」の回答が20%超に上り、現場への浸透不足をうかがわせる。
※本調査でのデータ活用は、企業内の各種データを意思決定や業務改善に役立てる取り組みを指す。

データ取り扱いの課題(Q8)
「データ品質のばらつき」の30.0%、「リアルタイム連携の仕組みがない」の25.7%、「必要データが複数システムに散在」の25.3%が上位である。これらの課題が解決されない限り、AI活用の高度化や全社DXの推進は困難であると整理されている。経営層ほど強い課題認識がみられる点も特徴である。

公式コメント
ドーモ株式会社 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー 川崎友和氏は、経営層は前向きだが現場の活用レベルや成果実感は低い傾向、「分からない」回答の多さを指摘し、ツール導入にとどまらず全社浸透で成果を創出する重要性を述べる。また、売上拡大や新規ビジネス創出といった価値創造へのシフトには、明確な戦略・ビジョンの下での全社的な体制づくりが不可欠であり、データの散在や品質ばらつき、リアルタイム連携の不足などデータとAIの接続課題を解く必要があるとした。
出典:PRTimes AI活用の障壁 「従業員のリテラシー・知識不足(46.1%)」、「AI活用の戦略やビジョンの不明瞭さ(32.3%)」が上位に、「置いてけぼり」の現場で広がる意識の差も浮き彫りに
