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暗号を理解するための数学の世界 CS四方山話(第35話)

「小学校からの数学」シリーズ・第14弾です。前回予告の通り、今回から小学5年生に進級です。あと2学年で「小学校からの数学」シリーズも卒業です。

またもや、執筆としては前回から3ヵ月以上空くことになりました。夏休み……ではなく、えっと……出張とか「CS四方山話」の電子書籍化とかで……。

そうです!「CS四方山話」の電子書籍 第1段は、10月1日に ConTenDo さん(コンテン堂、https://contendo.jp/)から発売されました。ご購入を検討頂ければ幸甚です。

小数

今回のテーマである「小数」は、小学3年生で登場します。本連載・CS四方山話では第31話(https://japansecuritysummit.org/2023/11/8753/)で取り上げました。

簡単に復習すると、「1」よりも小さい数値を表現するための小数は16〜17世紀に発明され、「.」を使った表記方法はネイピア数「e」で有名な John Napier (1550-1614) さんが発明しました。

小数の計算~桁数を変えて使い慣れた整数の計算に

まず、分かり易いところでは10, 100, 1000倍する、1/10, 1/100, 1/1000倍するという計算です。我々は、通常10進数を使うので、この計算は「桁の変化」になります。

3.14を10倍すると31.4になり、3.14を100倍すると314という整数になります。141という整数を1/10倍すると14.1になり、1/100倍すると1.41になり、1/100倍すると0.141になります。

ここから分かることは、小数と整数は「演算によって行き来ができる」ということです。つまり、同じ数の仲間ということです。

小学5年生での「小数×小数」の演算は、上記の「行き来」を利用して、使い慣れた整数の計算に持ち込んで扱うことになっています。

たとえば掛け算に関しては、下記のような手順です。

掛け算をする両方の値に10を掛けて整数化して、整数同士での演算をして、掛けた10を

3.1×0.2 = 31÷10×2÷10 = 31×2÷100 = 62÷10÷10 = 0.62

割り算に関しては下記のような手順です。

割り算をする両方の値に 10 を掛けて整数化して、整数同士での演算をして……

この場合は同じ数を掛けているので追加の演算は不要です。

2.4÷0.8 = (2.4×10)÷(0.8×10) = 24÷8 =3

このケースでは、割り算をする両方の値に異なる数値を掛けていますので、最後に「調整」が必要です。
2.4 ÷ 0.08 = (2.4×10)÷(0.08×10×10) = 24÷8÷10 = 0.3

ここでは小数の計算が対象ですが、ここにある考え方は大切です。つまり問題を分解し、分かっている問題に持ち込んで解決を図る。このようなアプローチは数学では往々にして登場します。そして、このような考え方はすべての事柄に当てはまります。覚えていると役に立つこともあるでしょう(たぶん……)。

式の決まり~交換則、結合則、分配則

ついに登場しましたね、「式の決まり」!! 当時は意識していませんでしたが、この「式の決まり」は「数の概念」を定義する上でも非常に重要な事柄です。

式の決まりとは、その言葉自体は小学5年生では登場しませんが、交換則、結合則、分配則という数学上の重要な法則のことです。

交換則とは、足し算で足す順序を換えても同じ結果になる、掛け算で掛ける順序を換えても同じ結果になる法則のことです。

  ○ + △ = △ + ○ 例: 2+6 = 6+2 = 8

  ○ × △ = △ × ○ 例: 3×7 = 7×3 = 21

結合則とは、3つ以上の数の足し算ではどこから計算しても同じ結果になる、3つ以上の数の掛け算ではどこから計算しても同じ結果になる法則のことです。

  ○ + △ + □ = ( △ + ○ ) + □ = ○ + ( △ + □ )

   例: (2+6)+8 = 8+8 = 2+(6+8 ) = 2+14 = 16

  ○ × △ = △ × ○

   例: (3×7)×9 = 21×9 = 3×(7×9) = 3×63 = 189

これらの法則を上手く使うと計算が楽になります。

   例: 25×37×4 = 25×(37×4) = 25×(4×37)

      = 25×4×37 = (25×4)×37 = 100×37 = 3700

分配則とは、足し算の結果に対して掛け算を行っても、足し算の前に掛け算を行ってその結果を足し算しても同じ結果になる法則のことです。

  ( △ + ○ ) × □ = ( △ × □ ) + ( ○ × □ )

   例: (2+6)×8 = 8×8 = (2×8)+(6×8 ) = 16+48 = 64

足し算を引き算に置き換えても同じです。

  ( △ − ○ ) × □ = ( △ × □ ) − ( ○ × □ )

 これの法則も上手く使うと計算が楽になります。

   例: 98×13 = (100−2 )×13 = (100×13 )−( 2×13 )

       = 1300−26 = 1274

この「計算が楽になる」も「問題を分解し、分かっている問題に持ち込んで解決を図る」ことになります。

前述のとおり、このような考え方はすべての事柄に当てはまります。数学が教えてくれる考え方は広く遍く適用可能です。どうです? これで、もう一歩数学を好きになれたでしょうか?

まとめ

今回は、小学5年生の課程の「小数の計算」と「式の決まり」を勉強しました。次回(第36話)も引き続き小学5年生の課程です。小学5年生には、平面図形、立体図形などの話題もあります。引き続き、ご購読いただければ幸いです。


四方山話 

今年(2024年)は執筆をサボっている、否、執筆の間が空いた間に、大きなサイバー攻撃の事案が2つ発生していました。皆さんもニュースでご存知だと思いますが、KADOKAWAさん、JAXAさんの件です。この事案については沢山の情報が公開されていますので、ここで詳説することはしません。

ただ2つの事案について思うところは「攻撃は何度でも押し寄せる」「一度攻撃を受けて対策したつもりでも、その対策を掻い潜る新たな攻撃が行われる」ということです。ましてや、何も対策を行っていない状態では、攻撃を受けた場合に為す術がありません。こうした認識が広まると良いな、広めなければと思っています。

雑談

筆者は、山口県山口市に(月の2/3)住んでいます。同じ山口県には萩市もあります。最近、友人に誘われて、萩市を2回ほど訪問してました。なんだか筆者も魅せられたようです。

萩市浜崎町に古民家を改装した素敵なお店があります。手打蕎麦のお店、本と美容室のお店、喫茶と古着のお店。勝手に店名を出すのは躊躇われますので、お店の名前は皆さんで探してみてください。できれば、実際に現地で!

もう1つ、萩市には素敵な景色を楽しめる場所があります。1つは「笠山山頂展望台」、もう1つは「陶芸の村広場展望台」です。画像は日中の景色ですが、お薦めは夕暮れ時です。夕景は、是非、現場に行って堪能してください。


CS四方山話の過去の記事はこちら(合わせてお読みください)

中村 健 (Ken Nakamura)
株式会社SYNCHRO 取締役 CTO

機械屋だったはずだが、いつの間にかソフト屋になっていた。
以前は計測制御、知識工学が専門分野で、日本版スペースシャトルの飛行実験に関わったり、アクアラインを掘ったりしていた。
VoIPに関わったことで通信も専門分野に加わり、最近はネットワークセキュリティに注力している。
https://www.udc-synchro.co.jp/

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